- 油絵を鉛筆で下書きする方法が知りたい
- どのタイミングで下書きするのかな?
- 鉛筆で下書きしなくても良いのかな?
- 下書きしたあとは油絵具で描き進めていいのかな?
- サイズが合わない時はどうやって下書きするのかな?
こういった疑問に答えます。
油絵を鉛筆で下書きする方法
結論、鉛筆で描いて定着させるだけです。
具体的には…
- 完全乾燥した下地の上に鉛筆で下書き
- フィキサチーフをかける
以上です。
なので、鉛筆で描いてフィキサチーフで定着させてから油絵を描きましょう。
油絵を鉛筆で下書きする時の道具
鉛筆で下書きする時の道具は3つです。
- 鉛筆
- フィクサチーフ
- 定規
以上です。
鉛筆は、柔らかい(色が濃い)芯の場合、色が濁る可能性があるのでHB~2Bぐらいがおすすめです。
フィクサチーフは、鉛筆と油絵具が混ざらないように支持体に定着させる役割があります。鉛筆で下書きしたらフィクサチーフを使いましょう。スプレータイプがおすすめです。
定規はモチーフをプリントアウトした紙や、支持体にマス目をつけるときに使います。定規はセンチ単位の目盛りがついているので比率を合わせるのに便利です。基本的には、上記3つあれば下書きができます。フリーハンドで描く場合は特に定規は必要ありません。
あったらなお良い下書きの道具
上記3つあれば下書きできますが、それ以外の方法でも下書きできます。他の方法で下書きする道具が下記です。
- デッサンスケール
- はかり棒
- 転写紙
上記の3つの道具は必須ではありません。持っていなくても下書きできます。それぞれの道具を使った下書きのやり方を下記に説明します。
油絵時に鉛筆でする具体的下書き方法
鉛筆の具体的な下書き方法は5つあります。
- モチーフと支持体にマスを設けて下書きする
- デッサンスケールを使って下書きする
- はかり棒を使って下書きする
- モチーフを支持体に転写して下書きする
- フリーハンドで下書きする
順番に解説します。
モチーフと支持体にマスを設けて下書きする
まずは、モチーフと支持体に同じ比率のマスを描きます。次に、モチーフを紙にプリントアウトし、モチーフの紙と支持体に同じ比率の四角を描いていきます。
モチーフが複数の小さな四角で細分化され、四角の線とモチーフとの線による交点も目安になって、1マスにどの部分を描けば良いかがわかりやすくなります。
デッサンスケールを使って下書きする
デッサンスケールは、太い黒枠の中に透明の小窓がついた板です。構図を決めるときに黒枠の中の透明の部分でモチーフを見ます。
デッサンスケールを使う場合は、支持体にデッサンスケールと同じ比率の線を引きます。モチーフにデッサンスケールをかざし、黒枠内を支持体と考えて、デッサンスケールはモチーフを見る目線に対して垂直にもち、モチーフが黒枠内におさまるような構図を考えます。
デッサンスケールのマスを目安にして、支持体のマスと比較してモチーフを描いていきます。
ホルベイン画材 300233 デッサンスケ-ル F Fサイズ用はかり棒を使って下書きする
はかり棒を使って下書きする方法です。
はかり棒は、モチーフの長さや幅などの比率を測る棒です。はかり棒には目盛りが記されていて、ピアノ線がネジによって付けられています。
角度を測るときにはネジを緩めて、モチーフの角度に合わせて角度を決め、固定したい場合はネジを締めてピアノ線を固定します。予め、はかり棒を水平、または垂直にしておくと、基準になります。はかり棒を水平、または垂直に固定してピアノ線の固定で決まった角度を支持体に描き写します。
または、ピアノ線を使わずにはかり棒本体で角度を固定し、そのまま支持体に転写する方法もあります。
はかり棒の使い方は、例えばモチーフが野球のバットとボールだった場合、短いものを基準にして測っていきます。モチーフのバットとボールが同じぐらいの位置にあると、バットを立てている場合、ボールの直径の長さはバットより短いはずです。
なので、はじめ短い方のボールの直径の長さを測って基準にし、その後バットの長さを測っていくという手順で測ります。
測るときの腕はモチーフに対してまっすぐ伸ばします。
持ち方は、右利きの人ははかり棒を左手に持ち、左利きの人は右手に持ちます。
手のひらを天に向け、親指以外の四本の指の付け根と平行になるように置きます。その四本の指ではかり棒を包み込むようにして握ります。親指は立てて、はかり棒に当てます。親指を当てるはかり棒の面は目盛りが見える状態にします。手の格好は、ちょうど「グッド」の形になります。
別の持ち方として、「グッド」の状態から薬指と小指は握らずに目盛り側に持ってきて、薬指は目盛りに当て、小指は薬指の腹に、小指の甲を当てる程度にする持ち方もあります。
いずれにしても、はかり棒を水平・または垂直に保てる持ち方が良いです。
縦長のモチーフを測る場合は、親指の先端を天に向け、はかり棒は地面に垂直にします。
横長のモチーフを測る場合は、手の甲を天に向け、親指とはかり棒は寝かせ地面と平行になるようにします。
基本的には親指の指先の位置と、はかり棒の先端の距離でモチーフの長さを測ります。
片目を閉じ、はかり棒の先端をボールの上の端に合わせます。その状態で親指の先がボールの下の端にくるよう親指をスライドさせて調節します。
ボールを測ったこの時のはかり棒の先と親指の先のサイズが、この絵のモチーフの基準になります。
このボールの長さが「1」になります。
次にバットの長さを測ります。先程決めた基準のままに、はかり棒の指を固定します。ずれても安心なように、目盛りを確認しておくか、マスキングテープなどを貼っても良いです。
バットは立ててあると仮定します。バットの上の端から下の端まで、ボールで測った「1」がいくつ当てはまるかをバットの下の端まで数えます。
ボールが「1」で、バットがボール10個分ならバットはボール基準で「10」ということになります。
これがはかり棒での基本的な測り方です。
しかし、実際測るとなると、バットの長さがボールの何個分ときっちり測れず、10個に少し満たなかったり10個以上ある場合があるはずです。
その時は、
- 10個に少し満たなかった→ボール「1」が9個分、プラス、ボール「1」の3分の2
- 10個以上ある→ボール「1」が10個分、プラス、ボール「1」の4分の1
上記のように大体の分数などで長さを決めます。
デスケル はかり棒 アルテージュモチーフを支持体に転写して下書きする
結論から言いますと、転写紙を使う下書きの方法です。
鉛筆で直接支持体に下書きするわけではなく、モチーフを印刷した紙に描きます。モチーフをなぞるように鉛筆で描き、転写でモチーフを下描きすることになります。
鉛筆の線の太さや折れる芯のことがストレスに感じる場合は、ボールペンなどを使います。ただし、ボールペンは先が尖っているので支持体を傷つけないような筆圧で描く必要があります。
モチーフを支持体に転写して下書きする条件は下記です。
- プリントアウトしたモチーフの紙と支持体の縮尺が同じ
以上です。
まるまる転写するので、支持体にモチーフが収まるようなサイズに合わせます。
以下、モチーフの転写に必要なものと、転写方法です。
モチーフの転写に必要なもの
モチーフの転写に必要なものは5つです。
- 支持体(下地材乾燥済み)
- カーボン紙(転写紙)
- モチーフをプリントアウトした紙
- 鉛筆(転写したとわかりやすい色がベスト→例:赤色)
- マスキングテープ
モチーフの転写方法
モチーフの転写方法は下記です。
- 支持体の上にカーボン紙を置く(支持体に線が写るように)
- カーボン紙にモチーフの紙を置く
- モチーフの紙をテープで支持体に留める
- 鉛筆でモチーフの形をなぞる
- 全て描き終えたらテープ、モチーフの紙、カーボン紙を支持体から取り外す
上記のような感じで転写完了です。
転写する時は、目立つ色で描くと、どこをなぞったかがひと目でわかるので、一度で転写できない場合や休憩を挟む場合などは有効です。
また転写されているか転写の途中で確認する場合は、留めてあるテープがズレないように静かに剥がして、紙をめくって確認します。確認したら、紙がズレないように戻しましょう。
カーボン紙 片面筆記 A4 黒フリーハンドで下書きする
フリーハンドで下書きする場合、モチーフと支持体の縦横の比率は合わせます。
具体的には…
- モチーフはFのタテ→支持体もFのタテ
- モチーフはS→支持体もS
上記のような感じだとモチーフと支持体の大きさが違っても縦横の比率が合っているので画面に収まらないことはないはず。フリーハンドで書くことが不安な場合はカーボン紙で転写しても構いません。
一方、あまり良くない比率例は…
- モチーフはS→支持体はF
- モチーフはタテM→支持体はS
上記のような感じです。この場合だと…
- 背景の縦、または横の面積が広くなる
- 窮屈な構図になる
- 構図が変わる
- モチーフを収めようとして絵が歪む
上記のような結果になってしまいます。
なので、基本的には支持体に合わせてモチーフの縦横比も合わせましょう。
フリーハンドで下書きする方法
フリーハンドで下書きする方法は以下です。
- あたりを描きながら、モチーフの大きさを把握する(丸や四角、芯の直線などの単純な形)
- 輪郭、角度、曲線などを薄く描いて徐々に形を決めていく
- 大体の陰影を描く
- おかしいところは修正しながら描いていく
以上です。
油絵のとき鉛筆で下書きするタイミング
下書きするタイミングは、下地材が乾いたタイミングで行うと良いです。
下地材の乾燥は、表面ではなく中までしっかりと乾かす完全乾燥が必須です。
ちなみにジェッソ下地なら、支持体に塗ってから3日で完全乾燥します。水性で塗りやすく扱いやすいので、おすすめです。もちろん、油絵専用の下地材や、アキーラなどでも下地材が可能です。
アキーラを下地材にする場合は、油絵具を塗るのに、完全乾燥でなくとも塗れます。なので、下書きできる状態まで乾燥させればOKです。アキーラを厚塗りしなければ、アキーラを下地材として塗った次の日に下書きが可能です。アキーラは絵の具ですが、油絵の下地材として使用できます。
- ホルベイン ジェッソS 300ml
- クサカベ 水性アルキド樹脂絵具 アキーラ 20号(100ml) ミキシングホワイト
- クサカベ 水性アルキド樹脂絵具 アキーラ 20号(100ml) チタニウムホワイト
下書き前後の工程
下書き前後の工程は以下です。
- 支持体に下地材を塗る→下地材が乾く(完全乾燥)→下書きする→フィキサチーフをかける→フィクサチーフを乾かす→おつゆがきする…
上記のとおりです。
ちなみに鉛筆で下書きしたあとは、フィキサチーフをかけましょう。フィキサチーフをかけないと、油絵具と鉛筆の色が混ざって油絵具の色が濁ってしまいます。なので、鉛筆で下書きする場合、フィキサチーフを使ったほうが良いです。
鉛筆で下書きしなくても良いのか
結論は、鉛筆の下書きは任意です。してもしなくてもどちらでも良いです。
理由は、私は下書きしなくても油絵が描けるか試した結果、イメージ通りの絵が描けた経験があるからです。
また、鉛筆で下書きしなくても、油絵の具で下書きしたり、アクリル絵の具で下書きする方法もあります。
このあたりは、初心者の場合うまくいかないことが多くて「下書きするんだった…」と後悔するかもしれないので、不安なら一度失敗してもダメージが少ない方法で練習してみましょう。
練習方法として、例えば…
- 安くて小さい支持体に下書きなしで油絵の練習
- 紙に下書きなしで油絵を練習
上記のような感じです。
また、油絵を描いている人はどんな下書きをしてから油絵を描いているのか、動画で見る方法もあります。
油絵にアラプリマという技法がありますが、まさにこのアラプリマ技法が下書きなしで一気に描く方法です。一度アラプリマ技法を試してみると自分でも意外と下書きなしで絵が描けることに驚くはずです。
逆に絵がうまく描けるか不安で、カーボン紙の転写で細かく完璧に下書きし、塗り絵のような仕上がりになってはあまり意味がないように感じます。
あなたが超リアルに描きたい場合は別ですが、迫力や躍動感のように絵に動きを付けたような筆跡を残す描き方の場合、下書きはメモ程度に留めましょう。
迫力や躍動感を出すときには、筆を使ったときが勝負となります。下書きも大事ですが、油絵の具で塗った完成した絵のほうがもっと大事です。
まとめ
- 油絵の鉛筆の下書き方法はマスを設けたり、転写したり、モチーフの長さや角度を測ったり、フリーハンドで下書きする方法があります。あなたが好きな方法で下書きしましょう。
- 下書きするタイミングは、下地材が完全乾燥したら描くことができます。下書きしたら、フィクサチーフをかけて油絵の具との濁りを防ぎましょう。
- 鉛筆での下書きは絶対しなければいけないわけではないです。失敗したくない場合は下書きをしっかりしましょう。下書きをうまく利用して、あなたの絵を見る人に感動を与える油絵を描きましょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。