油絵の描き方を初心者に解説|最低限そろえるべきものと守るべきこと

この記事では次のことをお伝えします。

初心者だけど油絵の描き方が知りたい

これから油絵を始めてみたい方や、描き方の手順に不安な方向けに解説しています。

最低限の道具をそろえて油絵を描く方法ですので、まずはそれらをそろえてから油絵を描いてみましょう。

この記事のざっくりとした結論
  • まず油絵のことや道具の使い方を知ると描き方の説明がわかりやすくなる
  • 一通り画材屋さんで道具や材料をそろえてから油絵をはじめよう
  • テクニックはあるが、理想の絵を筆だけで描いてみよう

もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。

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油絵の描き方を初心者向けに解説

油絵の描き方を初心者向けに解説します。はじめに描き方の説明をしてもよいのですが、道具の名称や使い方などがわからないと思います。ですので、油絵の説明→道具・材料の説明→描き方の順番にご説明します。

油絵とは

油絵とは、油絵の具を使った絵のことです。油絵の具とは、材料は主に顔料と油(乾性油)を混ぜて作られたものです。

まるで写真のようなリアルな表現や、抽象的な表現、また絵の具を盛り上げて物質感を出すことも可能です。

かつての画家の多くは、油絵の作品で有名です。

有名作品
  • ゴッホの「ひまわり」
  • レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」
  • パブロ・ピカソの「ゲルニカ」

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油絵の魅力

油絵の魅力はすぐには乾かないことと、乾いても容積が変わらないことです。

なので、ぼかしやスフマート(輪郭を線ではっきり描かずに境をぼかして描く技法)が可能ですし、画面上でちがう色同士を混ぜ合わせることもできます。

また、その日のうちに絵の具を重ねていくことができます。

10日程たてば表面が乾いていますので、別の油絵の具で下層の色をおおい隠すことも透かして見せることもできます。修正が用意で、納得いくまで描き続けることができます。

油絵は今まで経験したことがない人がほとんどで、なじみがなくハードルが高いと思う人が多いのではないでしょうか。道具や材料がそろえられれば誰でも始めることができる技法です。

何回も何回も修正が効く画材です。失敗したらティッシュや布でぬぐい取ればOKです。また、ナイフで削ぎ落とすこともできます。それらができない場合は、10日程乾かしたあとに上から描いて修正しましょう。

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油絵の道具・材料の紹介

油絵の道具や材料の紹介です。道具の使い方を知ることで、のちに説明する油絵制作の説明でも理解しながら読むことができるかと思います。

油絵の道具や材料についてです。これらの道具をそろえれば油絵を描くことができます。

油絵で使用する道具と材料
  • 鉛筆・木炭
  • 支持体
  • 油絵の具
  • 絵筆
  • 筆洗油(筆洗器)
  • 筆洗液
  • 画溶液
  • パレット
  • 油壷
  • イーゼル
  • ティッシュペーパー・キッチンペーパー
  • ビニール袋
  • ナイフ

鉛筆・木炭

鉛筆や木炭は下書きや転写時、紙の裏を塗りつぶすときに使います。

普段使用している鉛筆を使えばOKです。

支持体

支持体とは、絵の具を塗る相手のことです。だいたい以下の支持体に絵を描くことができます。

油絵の支持体
  • 張りキャンバス
  • シナベニヤパネル
  • キャンバスボード
  • 油彩紙

張りキャンバスは、一般的な支持体です。布を織り込んで木枠にキャンバスの布を張っています。

素材は麻や化学繊維などが多いです。

目は目が荒いもの(荒目)から細かいもの(細目)まであります。一般的には中間の中目が多く販売されています。

規格はF・M・P・Sとありますが、一般的なものはFです。F3号くらいのサイズから始めれば良いかと思います。

また、シナベニヤパネルにも描けます。ラワンベニヤではなく、必ずシナベニヤパネルに描きましょう。

キャンバスボードは、木枠のないキャンバスです。張りキャンバスやシナベニヤパネルより厚みがないので、かさばらずに済みます。中には表裏両面に描けるタイプもあります。

さらに、油絵用の紙もあります。油彩紙と言い、加工されているものは下地材なしで直接油絵を描くことができます。

なお、支持体は、画材屋さんやネット通販サイト、大きめなホームセンターなどに売っています。油彩紙は売っているお店と売っていないお店があります。なので、事前に確認しましょう。

また、「初心者だからかさばらずに練習したい」方は、薄めの支持体がおすすめです。部屋を圧迫せずに絵を描けるからです。

なので、油彩紙やホームセンターのシナベニヤ板(2.5㎜~)を購入してきて自分が好きな寸法にカットしながら描く方法もあります。切るのが大変な場合は、有料でカットしてくれるサービスもあります。

なお、紙でもシナベニヤ板でも額に入れて販売することができます。

支持体の販売店
  • 支持体が売っている店舗:世界堂、ジョイフル本田など
  • 支持体が売っているネット通販サイト:ゆめ画材、世界堂
  • シナベニヤ板が売っている店舗:島忠ホームズ、コーナンなどのホームセンター
  • シナベニヤ板が売っているネット通販サイト:田木屋商店

なお、田木屋商店さんはお好みのサイズにカットしてもらえます。

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油絵の具

油絵の具は顔料と油(乾性油)が練り込まれています。パレットに絞り出しても形が変わりにくいほど粘度が高めです。空気に反応し、酸化して乾燥します。乾性油が乾燥して支持体に定着することで油絵を描くことができます。

油絵の具をそろえる方法は、

  • 油絵の具セット
  • 油絵の具単品

以上2つです。

上記のように、油絵の具がわからない場合はセット購入をおすすめします。ですが、使っていくうちに使わない色や欲しい色が見つかってくるかもしれません。そのようなときは買い足していけば良いと思います。

油絵の具は少なすぎても多すぎても良くないと思っています。

油絵の具には国内外さまざまなメーカーがあります。

メーカーによってチューブの形、発色、名称、油絵の具の粘度がちがいます。

わからない場合は、有名なメーカーのホルベイン、クサカベ、マツダあたりの油絵の具を見ていけば良いかと思います。

画材屋さんにはだいたいこの3メーカーの油絵が置いてあります。

絵筆

絵筆とは、絵を描くときに使う筆です。

筆の形は平筆、丸筆、扇形などがあります。

おすすめの素材は豚毛やナイロンです。

筆の毛の素材は、硬いものは豚毛から、腰のあるナイロン、柔らかい馬毛などがあります。

豚毛は、粘度の高い油絵の具を塗るのに向いています。

一方、ナイロン筆は豚毛より柔らかめですが、こしがあるのでなめらかに塗ることができます。ぼかしやグラデーションがつけやすい筆です。

粘度調節は画溶液でできるので、油絵の具が硬いと感じるときは少しだけ筆につけてから油絵の具をすくえば良いです。

細かい描写をしたい場合はナイロン筆、そうでなければ豚毛がおすすめです。

そろえる本数は決まっていませんが、大中小くらいの3本を持っていると良いかと思います。

また、支持体の大きさによっても筆の大きさを使い分けたりもします。あまり小さな筆で描いていれば、印象の薄い絵になってしまいます。

なので、やや大きめの筆で絵を描いていきましょう。また、大きな支持体のときには刷毛も使うことがあります。下地材や彩色のときに重宝しますので、持っていると良いかと思います。

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筆洗油(ひっせんゆ)

筆洗油は筆についた油絵の具を洗い流すために使います。ブラシクリーナーとも言います。油絵を描いている最中に頻繁に使用するものです。

油絵は水彩画やアクリル画を制作するときとはちがい、絵具を水で落とすことができません。油絵の場合は、オイルで筆についた絵具を落とします。

油絵を描いていて、例えばトマトの赤色を塗った後、つぎにヘタの緑色を塗りたい場合、筆についた赤色の絵具をティッシュやキッチンペーパーにぬぐい、筆洗油のなかに筆を入れてスライドさせ、残りの油絵の具を落とします。そのあとティッシュやキッチンペーパーにぬぐい、筆についた筆洗油を取り除きます。

筆がきれいな状態になったら、トマトのヘタの緑色を筆につけて支持体に彩色します。この手順の繰り返しで油絵制作を進めていきます。

筆が常にきれいな状態だと色を替えたときに、にごることなく絵が描けます。

筆洗油の量が減った場合は継ぎ足しながら使用しますが、筆洗油が汚れたら一度全て捨てて容器をきれいに洗い、新しい筆洗油を入れてから使いましょう。

ちなみに、油絵の具の汚れはかき混ぜるとにごりますが、しばらくすると筆洗油の中で沈殿します。なので、次回使用するときはきれいな状態になっています。

ちなみにブラシクリーナーには中ほどに筆を洗うための凹凸が付いているものがあります。なので、そのまま容器に筆を突っ込んで凹凸部分でスライドさせ、余分な油絵の具を落とします。

なお、ブラシクリーナーの容器が小さい場合は、別途筆洗油と筆洗器を購入します。筆洗器のいくつもある丸い穴の上まで筆洗油を入れます。

丸い穴でスライドさせたときに筆の油絵の具が全て落ち切る量の筆洗油を入れます。筆洗器はブラシクリーナーの容器より重く安定感があるので使いやすいです。

油絵で使う筆洗油と筆洗器
  • 無臭クリーナー
  • 筆洗油(継ぎ足すときに使用)
  • 筆洗器(別売りの筆洗用クリーナーを注いで使う)

筆洗液

筆洗液は、その日油絵制作が終わったら次回道具を使うときにきれいな状態で使えるようにするために掃除するものです。

こちらもブラシクリーナーと呼ぶので紛らわしいのですが、製作途中に使う筆洗油は油性、制作後に使う筆洗液は水性です。

主に掃除するものは、制作後の筆と油壺(絵皿)です。

筆洗液がない場合は、食器用洗剤や石鹸などで代用できます。

油絵の具は排水に流さないように、ビニールの袋などにまとめてから最後の最後に洗面台ですすぎます。

油絵制作後に使用する筆洗液
  • アプト

画溶液(がようえき)

画溶液とは、制作のときに油絵の具の不足を補ってくれる溶液です。溶き油とも言ったりします。

画溶液を使うと表現の幅が広がります。

例えば、

  • 透明度を強める
  • 乾燥時間を調節できる
  • 筆運びがしやすくなる
  • 画面保護できる

などです。

画溶液は、油絵をはじめたての頃は何がなんだかわからないかと思います。

初心者の場合は最低ペインティングオイル1本持っていれば油絵が最初から最後まで描けます。

また、描きはじめに揮発性油で「おつゆがき」という描き方をする場合があります。ですが、必ずやらなければいけないことはありません。いきなり乾性油と油絵の具を混ぜて描く方もいらっしゃいます。

油絵を描くときに自分で調合する場合は、描き始めは揮発性油多めで乾性油少なめ、完成に近づくにつれて揮発性油少なめで乾性油多めとだけ覚えておけばよいかと思います。とはいえ、油絵はペインティングオイルと油絵の具で描くことができます。

また、石油系の臭いがする画溶液もありますし、揮発性油でも臭いがするものもあります。臭いがするのを避けたい場合は、臭いがしないタイプの画溶液も販売されています。「オドレス」という名前がつく画溶液です。

臭いが部屋中に充満するのが嫌な場合は、これらを購入することをおすすめします。ちなみに、油絵を描くときは換気しましょう。

最低限持っておきたい画溶液
  • オドレスペンチングオイル(調合溶き油)
  • オドレスペトロール(揮発性油)
  • タブロースペシャル(画面保護してくれる画溶液)
  • ストリッパー(筆や容器についたタブロースペシャルを落とす)

パレット

油絵用のパレットは、油絵の制作のときにさまざまな色の絵の具を出しておいたり、支持体に色を塗る前に色や粘度を調節するための板のことです。

毎回全ての色を出した方が彩色の幅を制限されずに済みます。

パレットは、ペーパーパレット(紙)と木製があり、なかにはガラスや大理石のものもあります。

サイズはさまざまですが、油絵の具を全て使うことをおすすめしているので、大きめのパレットが理想です。

ペーパーパレットは厚紙の上に、油絵の具が染み込まないようにコーティングされた紙が何十枚も糊付けされたパレットです。常に一番上のペーパーパレットを使用します。絵が完成し、油絵の具を使わなくなったら使用した紙だけ内側に丸めてたたみ、ゴミ袋に入れて処分できます。

「使ったら捨てる」を繰り返すだけなので、常に清潔でパレットを掃除する必要がありません。

ただし、ペーパーパレットがなくなったらその都度購入する手間と代金がかかります。

一方、木製パレットは油絵の具が染み込まないように表面がコーティングされたパレットです。パレットが壊れない限り永遠に使うことができます。また、ずっと使っていればパレット代がかからずに済みます。

また、折りたたみ式のパレットは、チューブから出した油絵の具を次回も使う場合、折りたたんでおけば、周りに絵の具をつけることなく箱の中などに置いておけます。

ちなみに折りたたみ式以外の木製パレットやペーパーパレットでも、油絵の具の上からラップでおおえば、チューブから出した油絵の具を次回も使うことができます。

ただし、混色スペースはパレットナイフなどを使ってきれいに掃除しておきましょう。

木製パレットを使うデメリットとしては、毎回パレットの掃除が必要ということです。木製パレットは毎回きれいにしないといけませんし、もしパレットが汚れていたら油絵にも影響してしまいます。

掃除の時間を惜しいと思うか
パレット代が惜しいと思うか

どちらかが良いかを考えて使用しましょう。

とりあえず、迷ったらペーパーパレットを一つ購入してみましょう。ペーパーパレットを使ってみて、パレットの使い方を勉強しながら慣れていきましょう。

筆者は、パレットの手入れの時間を減らしたいのでペーパーパレットのみを使用しています。また、毎回きれいなパレットの面が使えるので清潔で良いです。

パレット

ペーパーパレット(掃除の手間なし)
木製パレット(一枚買えばパレット購入の必要なし)

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油壷(あぶらつぼ)

油壷は、揮発性油や乾性油などを入れる容器のことです。

油壷はフタつきなので、一度注ぎ入れた画溶液を何日も保管しておくことが可能です。また、容器の底にクリップが付いているのでパレットに取り付けて、屋外で使用するときにも便利です。

ただし、油壷に長い間画溶液を置いておくと酸化してフタが開かなくなったり、変質して本来の画溶液の役割を果たさない場合があります。なので、期限を決めそれ以降はきれいに掃除しましょう。

自宅で油絵を制作する場合は、油壷でなく絵皿でも良いです。絵皿は画材屋さんに売っています。丸い皿状なので口が広く安定感があります。また、凹凸がほとんどないのでそろばん型の油壷などの凹凸がある容器より洗いやすいです。

自宅に陶器の小皿がある場合は、わざわざ画材屋さんで買わなくても良いです。ただ、100~300円ほどで購入できるものなので、購入しても良いかと思います。

逆に、頻繁に外で油絵を描く場合は油壷があった方が便利です。

  • 絵皿
  • 油壷

イーゼル

イーゼルは支持体を立てかけて絵を描くときのものです。

支持体をテーブルに置いて描くこともできますが、奥行きが生まれてしまい、正確な形が描けなくなる可能性があります。また、支持体のサイズが大きくなるとテーブルに置けなかったり画材が置けなかったりして結果的に描きづらくなります。

なので、イーゼルは用意したほうが良いですね。

イーゼルを使うと、支持体に対して垂直に見ることができます。なので、テーブルに置いたときのように遠近感を気にせずに絵が描けます。

イーゼルは、屋外用の三脚式が良いと思います。脚が収納できるので、使用しないときはたたんで袋の中に入れてしまっておくことができます。

最大何号まで制作したいのか考えてから購入したほうが良いですね。

壁に立てかけて絵が描けるのであれば、それでも良いかと思います。ただし、壁に絵の具を付けないように気をつけましょう。

ティッシュペーパー・キッチンペーパー

ティッシュペーパーやキッチンペーパーは、筆の色をかえるときや、筆を筆洗油に浸ける前にぬぐうときに使います。筆洗油に浸ける前にぬぐうことで筆洗油のにごりを最小限におさえ、筆洗油を長く持たせることができます。

また、支持体の油分を拭き取ったり、パレットの絵の具をぬぐったり、片付けで絵皿についた画溶液をぬぐい取るときにも使います。

ビニール袋

ビニール袋は、油絵の具をぬぐったティッシュペーパー・キッチンペーパーやペーパーパレット、画溶液の廃液を捨てるために使用します。

油絵制作で使用した廃液や絵の具は排水として流せないので、なるべくぬぐい取ってビニール袋に入れ、ゴミに出しましょう。

油絵の具や廃液をきれいにぬぐい取って、初めて筆や油壷を水道で洗います。

ナイフ

ナイフは主に2種類あります。

  • パレットナイフ
  • ペインティングナイフ

パレットナイフは、パレットの上で絵の具を混色したり、絵の具とメディウムを混ぜたり、絵の具をかき取ったりするためのナイフです。

一方ペインティングナイフは、絵を描くときに使うナイフです。絵の具をかき取ったり、厚みのある表現などが可能です。

ナイフを使った表現をする場合は、パレットナイフ購入は必須です。また、パレットの混色をナイフでしたり、混色スペースがなくなった際に、混色した油絵の具をきれいに掃除するときにも重宝します。

ただし、混色スペースの油絵の具を掃除するだけなら100円ショップのスクレーパーでも代用できます。カッターナイフの刃を使って掃除する人もいます。また、混色は筆でもできます。

なので、最低1本持っていて損はないかもしれませんが、ナイフの描画をしない方はなくても問題ないかと思います。

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道具や材料は油絵をやる前に一通りそろえる

一通りそろえてから油絵を描いてみましょう。

油絵の初心者は、とりあえず油絵の道具が一式そろったセット購入をおすすめします。

画材屋さんには多くの道具や油絵の具、画溶液があります。初心者は何を買ったらいいのかわかりません。しかし、セットを購入することで迷うことなく油絵を描き始めることができます。

ただし、セット購入で不便なのは木箱です。かさばるし重いからです。

また、油絵を続けていくと道具や材料が増えていって木箱に収まらなくなります。木箱に入る容量は最低限で、それ以上買い足すともうキャパオーバーです。なので、木箱は使わなくなる可能性があります。

画家気分に浸れるし、何より油絵がはかどるという場合は木箱も注文すべきですが、特に理由がなければ木箱なしで購入することをおすすめします。

油絵の具は画材屋さんで購入する

油絵の道具や材料は、店舗やネット通販で、画材屋さんから購入しましょう。一方、100円ショップでも油絵の具は販売しているようです。しかし、色の鮮やかさや顔料、乾性油の品質には信頼度が微妙なところです。

油絵をある程度続けていくのであれば、品質に信頼がおけるメーカーのものを使用したほうが良いのではないかなと思います。

メーカーによって顔料や発色へのこだわりなどが違うと思います。お気に入りのメーカーを探してみましょう。画材屋さんであれば、クサカベ、ホルベイン、マツダなどが代表的な油絵の具メーカーです。

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油絵の描き方

油絵のことや道具、材料のことを覚えたところで、油絵の描き方をご説明していきます。

油絵の描き方
  • モチーフを決める
  • モチーフをセッティングする
  • 構図を決める
  • 下地材を塗る
  • 下書きする
  • 下書きを定着させる
  • 下塗りをする
  • 油絵の具で素描(そびょう)する
  • 彩色していく
  • 細部を描きこむ
  • 後片付けする
  • 仕上げ材を塗る

モチーフを決める

まずはモチーフを決めましょう。

モチーフとは、「芸術分野において創作の思想や題材という意味」です。引用元:Weblio辞書

つまり、「何を描くか」の「何」の部分です。

モチーフは、例えばトマトを描きたい場合3通りの見方があります。

モチーフの見方
  • 実物
  • 写真
  • 画像

実物は、実際にトマトをセッティングして光を当てて、それを見ながら描きます。

写真は、トマトの写真を見ながら描きます。

画像は、フリーの画像や自分が撮影した画像をスマホやタブレットで見ながら描いていきます。

モチーフをセッティングする

モチーフが決まったら、支持体とモチーフを一緒に見られる位置に配置します。

モチーフの配置
  • 右利きの人は支持体が真正面でモチーフが左側
  • 左利きの人は支持体が真正面でモチーフが右側

上記のようにして配置します。

そうすると「自分の手でモチーフが見えづらい」ということを防げます。

なるべく支持体とモチーフが同じ高さにあると良いかと思います。支持体から目線を左(右)に少し切るとモチーフが見える状態が理想です。

構図を決める

構図を決めていきましょう。

構図は色や形、位置などを組み合わせて、モチーフがどのくらいの割合を占めるのかを見ていきます。

例えば、画面いっぱいにモチーフを配置するのか、または画面の7割くらいの大きさに配置するのかなどです。

モチーフは、全部書く必要はありません。心地よい構図を探っていきます。

ノートに四角の枠を描いてモチーフを入れた構図をラフスケッチで描いてみるとか、デッサンスケールを使って構図を探ってみるのもいいかもしれません。

構図を見てみることで、全体のバランスが理解できます。

下地材を塗る

支持体に下地材を塗ります。

下地材を塗る理由は、以下です。

  • 油絵の具の定着
  • 発色が良くなる
  • 支持体の目をつぶす

また、支持体に直接油絵の具を塗ると支持体の素材(木、紙)などが劣化してしまうようです。

なので、下地材は必ず塗ったほうが良いですね。

おすすめはジェッソです。水で溶くことができて扱いも簡単です。

ジェッソの塗り方は、以下です。

ジェッソの塗り方
  • 支持体の表面の汚れを拭き上げる
  • ジェッソを容器に注ぐ
  • 刷毛でジェッソをかき混ぜる
  • 支持体に塗る
  • 乾かす

以上です。

支持体がシナベニヤなどの木材の場合は、一度ヤスリでやすってから余分なゴミを拭き取ります。ジェッソは決められた割合を超えなければ水を足すこともできます。

支持体に塗るときは刷毛で塗ったときのスジができないように薄めに塗っていきます。「タテに塗ったらヨコに塗る」、「タテに塗ったらヨコに塗る」を繰り返します。

何層にも塗るときは間を1~2時間程あけて、「塗る→乾かす」を繰り返します。ジェッソを塗り終わったら、塗り終えてから丸3日乾かします。

丸3日乾かしたら、ヤスリで表面を削りなめらかにしていきます。そして、表面の汚れを拭き取ったら、ようやく下書きができる状態になります。

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下書きする

下地材が乾いたら、下書きしていきましょう。

鉛筆、木炭などを使って描いていきます。

モチーフを見ながら下書きしていきましょう。

下書きの描き方は3つの方法があります。

下書きの描き方
  • フリーハンドで描く
  • 転写して描く
  • マスに合わせて描く
  • 測りながら描く

フリーハンドは、モチーフを見ながら支持体に寸法を測らずに描く方法です。

次に転写ですが、モチーフ画像を紙にプリントアウトし、支持体にマスキングテープで貼り付け、紙と支持体がズレないように注意しながら紙の上をなぞって下絵を描きます。

転写する方法は、2つあります。

1つは、あらかじめ紙の裏全体を鉛筆で塗り、裏返します。紙と支持体をセットしてモチーフの形を鉛筆やボールペンでなぞれば転写できます。

2つめは、紙と支持体の間にカーボンシートを敷いて下書きする方法です。

続いて、マスに合わせて下絵を描く方法です。モチーフをプリントアウトした紙にマス目を書き、支持体にもマス目を書きます。紙と支持体の同じマス目のところにモチーフを描いていくと、下絵が完成します。

最後は測りながら下絵を描く方法です。測り棒やデッサンスケールを使ってモチーフを見ながらタテやヨコ、ななめなどを測ってその寸法を写していきます。

下書きの方法は色々ありますが、やりやすい方法で下絵を描いてみると良いかと思います。また、いくら完璧に下書きできても、色をのせると形が多少大きくなったり小さくなったりしていきます。

なので、色をつけながら徐々に形を整えていけば良いかと思います。

下書きのときの陰影部分は斜線を描くことで、「ここが陰影部分ですよ」と知らせることができます。もちろん、濃淡を意識して描くこともできます。

なお、油絵の具で色を塗ってしまうとモチーフを大きく移動することは難しくなってきます。構図はこの下書きの段階である程度決定させましょう。

下書きを定着させる

下書きが終わったら、下書きを定着させましょう。

下書きのあとは実際に油絵の具を使用していきます。ですが、下書きを定着させないと鉛筆の灰色が油絵と混ざってしまい汚い画面になってしまいます。

なので、下書きを定着させてスムーズに油絵がかけるような準備が必要です。

下書きの定着にはフィキサチーフを使えばOKです。

フィキサチーフは、スプレータイプと液体のものがあります。おすすめはスプレータイプです。

支持体に向かってスプレーするだけなので、簡単に下絵を画面に定着させることができます。液垂れしないように支持体から離れて均一にスプレーしましょう。

下塗りする

下書きの定着が終わったら、下塗りをします。

下塗りとは、絵を描く前にキャンバス全体に色を塗っておくことを言います。褐色(黒ずんだ茶色)で塗ることを「インプリマトゥーラ」と言うようです。

下塗りは必ずやらなければならないわけではありません。下記に下塗りのメリットを解説します。

発色が良くなる
キャンバスの目が埋まって描きやすくなる

その後塗った油絵の具がキャンバスに定着する

初心者の方は、油絵の具の量がわからないので絵を描くときに少なめに使う傾向があるようです。油絵の具の量を少なめにしてしまうと、すべりが悪くなり筆運びがうまくいきません。

そこで、下塗りをしておくとキャンバスの凹凸が少なくなるので、たとえ薄い絵具でも比較的塗りやすくなります。

また、何層にも塗っていくと油絵独特の深みが表現できます。

下塗りする油絵の具の色は中間的な色がおすすめです。

中間色をぬる理由は、暗い色を塗っても、明るい色を塗っても色がどこに塗ったかがわかるからです。下地が暗すぎたり、白いままだと暗い色や明るい色を塗ってもどこに塗ったかわかりません。

なので、中間色を全体に作ってどこに何を塗ったかわかる状態を作りましょう。

中間色を作って、揮発性油で溶いて全体に塗ります。量が多い場合はパレットナイフで混色してから塗ると良いでしょう。

キャンバスに下塗りする場合は目を埋めるように塗りましょう。

また、下塗りの段階から厚い部分と薄い部分にわけると上層に塗るときに塗りづらくなります。なので、厚さを統一させましょう。

下書きが消えないように濃さを調節していきます。

数日乾燥させて表面が乾いたら油絵を描くことができます。

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油絵の具で素描(そびょう)する

下書きの定着や下塗りが済んだら、油絵の具で素描します。素描とは、「黒・セピアなどの単色の線で物の形象をを表し、また陰影をつけた絵」のことです。素描が完成品となることもあります。

下書きを見ながら素描していきましょう。

このときの油絵の具は茶色や黒色などを使っていきます。

バーントシェンナやペインズグレーなどです。

素描するときの画溶液には、揮発性油を使ったりペインティングオイルを使います。

油絵の具を描くときの画溶液は主に3種類あります。

油絵を描くときの画溶液
  • 揮発性油:テレピン、ペトロールなど
  • 乾性油:リンシードオイル、ポピーオイル、スタンドオイル
  • 樹脂:ダンマル、コーパル

油絵を描き始めに使うのは揮発性油がメインです。描き始めはツヤがあまりなく乾燥時間が短くなります。

そして、完成に近づくにつれて乾性油をメインに使用して描いていきます。

揮発性油は乾燥を促したり、油絵の具の濃さやねばりけを調整したり、乾性油を薄めたり、樹脂を溶かしたりと様々な効果があります。

乾性油は揮発性油とはちがい、乾燥が遅い画溶液です。透明で柔軟な粘り強い塗膜を作り、絵の具が定着して保護してくれます。

ペインティングオイルは、揮発性油、乾性油、樹脂や乾燥剤を調合した溶き油です。油絵の描き始めから完成まで全てこれ1本でまかなうことができます。

なので、油絵を始めて間もないときの描画用の油にはペインティングオイルだけを購入すればOKです。

なお、画溶液を入れる容器は油壷や絵皿を使用します。きれいな筆に画溶液を少しだけ浸してから油絵の具をつけます。

油壷や絵皿に筆を浸けるときは筆をぐるぐると回してつけないようにしましょう。油が汚れて使えなくなってしまいます。筆先に少しだけつければ油をにごらせずに済みます。

その後、パレット上で画溶液と油絵の具を混ぜて粘度をみてみます。サラサラすぎる場合は、油絵の具をティッシュペーパーなどでぬぐい、再び油絵の具を追加しましょう。そして、再びパレットで筆をなでてみて、良さそうなら素描していきます。

筆は、豚毛やナイロンのものを使用します。豚毛は硬いので、力が伝わりやすく、ナイロンはしなやかな筆運びができます。

筆の形は丸や平筆を持っていればOKです。丸筆は細部を描く時に役立ち、平筆は広い面を塗るのに役立ちます。

彩色していく

素描が終わったら実際の色で彩色していきましょう。油絵の具はチューブからパレットに全て出しておきましょう。

ちなみにチューブを絞るときは口から一番遠い部分から順番に絞り出しましょう。常に真ん中を押していると真ん中部分が弱くなり、チューブに穴が空いてしまう恐れがあるからです。口から遠い部分から順番に絞ることで、チューブの同じ部分を押さずに済み、チューブに穴が空くのを防ぎます。

例えばトマトでしたら、赤をベースに色づくりを行います。

明るい色は赤に白や黄色を混ぜ、暗い色は赤に青や緑などを混ぜて調整していきます。

油絵の具はチューブに透明度が明記されていると思います。

油絵の透明度
  • 透明
  • 半透明
  • 不透明

透明の絵の具は下層に塗った色を透かせて複雑な画面にしてくれます。

半透明はかすかに下層の色を透かしますが上に塗った色が強い印象かと思います。

不透明は下層の色を完全におおい隠します。

基本的に、油絵を描くときは明るい部分には不透明を、暗い部分には透明な絵の具を使って描いていきます。

暗い部分は筆跡が目立つので、形状に合わせて何層か塗ると良いです。

塗り方は主に2つあります。

  • 固有色をモチーフ全体に塗ってから明暗を塗っていく
  • 始めから、その箇所ごとに色を塗っていく

固有色とは、それ自体の固有の色という意味です。トマトを例に取りますと、トマトの「赤」が固有色です。

なので、固有色をモチーフ全体に塗ってから明暗を塗っていく方法は、トマトの輪郭の中をすべて赤色で塗りつぶしてから明暗を塗っていきます。こうすると、塗り残しがなくなります。

もう一つのやり方としては始めからその箇所ごとに色を塗っていきます。これは、細かく下書きした場合に有効です。線の中にそれぞれの色を入れていけば良いので作業しやすいです。

トマトのテカっている部分(ハイライト)を塗り、次に中間の明るさの部分を塗り、最後に影を塗るなどですね。

どちらのやり方でも油絵は描けます。好きな塗り方で塗っていきましょう。

背景はモチーフそのままを描いてもいいですし、グレーなど単色で仕上げても良いかと思います。背景を塗るときには、モチーフの形を削りながら理想の形を探っていくことができます。もしモチーフを削りすぎたら、7日ほど乾かしてからモチーフを描き込めばOKです。

光が差す方向と、それに対する陰影を意識しながら、重ね塗りや画面上で絵の具を混ぜてみて描いていきましょう。

ある程度全体を描いたら7日~10日ほど乾燥させます。乾燥させると、表面が乾くので色を重ねても下層の色と混ざることがありません。

なお、一度乾燥させてしまうと今現在描いた部分はぼかすことができなくなります。なので、その日のうちにぼかしてしまいましょう。

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細部を描きこむ

この時点で、ある程度全体に色を塗っています。

ここで細部を描き込んでいきます。油絵の特長は、塗った色の上から何回でも手直しがきくところです。

とことんリアルに仕上げたければ細部を細い筆で描き込んでいきます。一方、抽象度を保ったまま仕上げたければ、明暗や彩度、形などを整えていきます。

光が当たる部分はハイライトの白色を塗ります。とくに、チタニウムホワイトは不透明なので下の絵の具を隠す力が強いです。

全体を見回して、特に問題がなければ完成です。

完成した油絵を手が触れない場所で乾燥させましょう。

後片付けする

その日の制作が終わったら、後片付けしましょう。道具を長持ちさせるため、毎日清潔に作業するために後片付けは大切です。

あらかじめビニール袋を用意しておき、ティッシュペーパーや廃液を一箇所にまとめていきます。

後片付けする道具
  • パレット
  • 絵皿(油壷)

その日油絵がおわったら、ペーパーパレットは内側に丸めて折りたたみ、小さくしてからビニール袋に入れます。

次に、絵皿の中に残っている画溶液をビニール袋に捨てます。まだ絵皿には油が残っているので、ティッシュペーパーなどできれいにぬぐい取ります。

次に、筆についた油絵の具をティッシュペーパーなどでぬぐい取り、筆を筆洗油で洗います。その後に絵皿の中に後片付け用のブラシクリーナー、または食器用洗剤を入れて筆で絵皿内のブラシクリーナー(または食器用洗剤)をかき混ぜます。

そうすると、筆の奥に残っている余分な色が出てきますので、筆でかき混ぜたブラシクリーナー(または食器用洗剤)の廃液をビニール袋に捨てます。

そのまま洗面台に向かい、水で筆と絵皿をすすぎます。まだ汚れが気になる場合は固形石鹸で筆と絵皿をもう一度洗うと良いです。

このように、廃液は極力排水に流さないように気をつけましょう。

ティッシュペーパーや廃液が入ったビニール袋は、ゴミとして処分します。

仕上げ材を塗る

油絵が乾いたら仕上げ材を塗ります。

仕上げ材は画面保護してくれる画溶液です。光沢を整えてくれるので見た目が良くなりますよ。

指触乾燥したら塗ることができる仕上材(タブロースペシャル、ラピッドタブローなど)と、完全乾燥したら塗ることができる仕上材(タブロー)に別れます。

指触乾燥とは、支持体を指で軽くさわっても油絵の具が指につかない状態のことを言います。絵の具の厚みにもよりますが、だいたい14日ほど見て乾かしておけば良いかと思います。

一方、完全乾燥とは6~12ヶ月乾かした状態のことです。支持体に描いた油絵の具全体が乾いています。

指触乾燥したら塗ることができる仕上材は、画面保護できますが有害ガスからの保護機能はありません。

一方、完全乾燥したら塗ることができる仕上材は、湿気や紫外線、有害ガスから画面を保護してくれます。

とはいえ、指触乾燥したら塗ることができる仕上材でも画面保護できますので、それを使えば良いかと思います。

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とりあえず描いてみましょう

油絵の技法は様々あります。

  • 厚塗り(油絵の具だけで描く)
  • 薄塗り(オイルを多めにする)
  • ぼかし(ちがう2色の境界をなでる)
  • スパッタリング(絵の具をはじいて小さな無数の粒を描く)
  • 点描(点を描いて最後まで絵を描く)
  • ペインティングナイフだけで油絵を描く
  • かすれ描き(筆にとる絵の具を少なめにとり、支持体で絵の具がつく部分、つかない部分を作る)

などなどです。

油絵は技法や道具が多く迷ってしまうと思います。しかし、基本的には「筆を使って描く」ことをベースに行っていけば良いと思います。

油絵を描くときには最低でも、油絵が描ける下地材が塗られていて、下地を十分に乾かしておけばOKです。

なので、テクニックも道具も材料も様々ありますが、理想の絵を描くことを意識していけば良いかと思います。

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まとめ

油絵の描き方を初心者に解説|最低限そろえるべきものと守るべきこと
  • まず油絵のことや道具の使い方を知ると描き方の説明がわかりやすくなる
  • 一通り画材屋さんで道具や材料をそろえてから油絵をはじめよう
  • テクニックはあるが、理想の絵を筆だけで描いてみよう

油絵の描き方を初心者の方に向けてご説明しました。

描き方にこれといった正解がないので、自由度が高すぎて逆に難しいと思いますが画溶液の使い方や掃除の仕方などを守っていけばOKです。

あとは描くことに集中できると思います。

まだ油絵の具を使ったときの硬さに慣れないかもしれませんが、使っているうちに特長がわかってくると思います。

また、透明と不透明の絵の具のちがいや、自分が描いたときの絵の具の量の少なさにも気づくかもしれません。

まずは、油絵を一枚完成させてみましょう。

 

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