この記事では次のことをお伝えします。
ひな祭りのお菓子には意味があるのでしょうか。
今回は代表的な3つのお菓子を取り上げて、伝統的な3つのお菓子の意味や由来をご説明します。
- 伝統的なひな菓子は「ひしもち」「ひなあられ」「ひちぎり」
- それぞれ意味と由来があり色にも意味がある
- ひしもちは時代とともに1段1段重なって3段になった
- 残念なひな菓子がある
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
★もくじ★
伝統的なひな祭り、3つのお菓子
ひな祭りの伝統的な3つのお菓子は、
- 菱餅(ひしもち)
- ひなあられ
- 引千切(ひちぎり)
です。
ひな祭りのお菓子「ひな菓子」の意味
ひな祭りのお菓子は「ひな菓子」と言います。
「ひな菓子」の意味は、女の子の厄をはらい、健康を願い、ひな人形への感謝の気持ちがこもったお供え物のことです。
なぜ、ひな人形への感謝の気持ちをこめるかと言うと、そもそもひな人形は女の子の身代わりに厄を吸収してくれる存在だからです。
ひな人形は、女の子の代わりに厄を受け、女の子が健やかに育つようにしてくれているわけです。
なので、ひな祭りにはひな菓子をひな壇にお供えしてひな人形に感謝の気持ちを伝えましょう。
ちなみに、「ひな菓子」とはひな祭りのときにひな壇にお供えするお菓子のことです。なので、お供えしないお菓子は「ひな菓子」とは言いません。
今が旬の和菓子たち≫伝統的なひな菓子を3つご紹介
伝統的なひな菓子3つ「ひしもち」「ひなあられ」「ひちぎり」、順番にそれぞれの意味と由来を見ていきましょう。
「ひしもち」とは
「ひしもち」は、赤・白・緑のおもちを三段に重ねてひし形に切ったお菓子のことです。
ひしもちの意味
ひしもちの意味は、植物である菱(ひし)の強い繁殖力から、子孫繁栄を連想させました。
なので、ひしもちには魔よけと子孫繁栄の力があると考えられていました。
ひしの実の形をしたひしもちは縁起物と言われ、厄除け、無病息災、子宝を願うひな祭りに食べられるようになったと言われています。
ひしもちの由来
中国では旧暦の3月3日(上巳の節句)にひしの実で作ったもちに、縁起物の「母子草」(ははこぐさ)を混ぜて食べる習慣がありました。
母子草には母と子が、ともに健やかであるように願いが込められています。その後日本に伝わったのですが、
「母と子をついて餅に混ぜるのは縁起が悪いのではないか」
と言われたようです。
なので、日本では「母子草」の代用として「よもぎ」が取り入れられました。「よもぎ」を入れた緑のもちが「ひしもち」のはじまりだったのだとか。
そのときのひしもちの形状は、ひしがたではなく、丸い形をしていたそうです。
江戸時代からひしの実を使った白いもちが追加されました。緑と白の2色、形もこのころからひし形になったそうです。健康と長寿を願う、縁起の良い形になりました。
ちなみに江戸時代のひしもちは白と緑の2色で、3段や5段に重ねられていたそうです。
図で見ると、3段イメージは↓
また5段イメージは↓
さらに明治時代には、クチナシの実を混ぜた赤色のもちが加わり、3色になりました。
赤はおめでたい色であることと、桃の花を連想させるため取り入れられたようですね。
今が旬の和菓子たち≫ひしもちのおいたち
ひしもちは時代によって変化しました。その様子を上記の図にしてみました。
時代とともに色が増えていっているのがわかるかと思います。
ひしもちは「ひし形」である意味
ひしもちは、江戸時代に女の子の健康と長寿を願って縁起の良いひし形になりました。
菱形の意味は「心臓をかたどった」ものと言われています。
ひなあられとは
ひなあられとは、「あられを砂糖や塩、しょうゆでコーティングしたひな菓子」です。
大きく東日本と西日本にわかれます。
東日本ではポン菓子(米が原料)に砂糖をまとったもの、西日本では餅を砕いて揚げ塩、しょうゆで味付けしています。
ひなあられは東日本では甘いですが、西日本はしょっぱい味なんですね。
色は、関東は赤、白、緑の3色、または黄色が加わって4色。関西は醤油の色がついているので茶色のようです。
ちなみに鳥取ではポン菓子を水飴でコーティングした「おいり」というひなあられがお供えされるそうです。
ひなあられの意味
ひなあられには、「自然のエネルギーを体内に取り込んで一年間健康に過ごせるよう願い、女の子の幸せを祈る」意味が込められています。
ひなあられの由来
江戸時代、家に飾ってあるひな人形を外に持って春の景色を見せてあげる「雛の国見せ(ひなのくにみせ)」とよばれる風習がありました。
女の子たちは天気の良い日にひな人形といっしょに外にでかけたそうです。
ひな人形と一緒に遊びに行くときに持ち歩くお菓子だったのです。
なので、必然的にひな人形とひなあられはセットでした。その名残で、現在家の中に飾るようになったおひなさまにはひなあられをお供えするようになっています。
ちなみにひなあられは「ひしもち」を細かく切って炒ったり揚げたりしたあられのことです。
ひちぎりとは
ひちぎりとは、京都で食べられることが多いひな菓子です。平安時代から現在まで伝わっています。
ひちぎりは、蓬餅(よもぎもち)や求肥(ぎゅうひ)をひきのばしてまんなかにくぼみを作り、その上に餡(あん)を乗せたお菓子です。もともとは「あんこ」ではなく「みそ」を使っていました。
餡(あん)はつぶあん、こしあん。白あんを赤・緑に色付けしたものを使用します。
ひちぎりの意味
ひちぎりは別名「あこやもち」と言われています。「あこや」は阿古屋貝(あこやがい)のことです。
阿古屋貝(あこやがい)は真珠を作る貝として知られています。
貝殻の中で、貴重な真珠を離さずにしっかり抱いている姿から、「真珠のように大切な女の子をしっかりと守りぬく」という気持ちがこめられているそうです。
もちを「あこや貝」に、あんは「女の子」に見立ているんですね。
ひちぎりの由来
ひちぎりは、もちを丸めるひまがないほど忙しいときに、もちのかたまりをひきちぎって作ったことからこの名前がつけられました。
ひちぎりの漢字は「引千切」と書きます。漢字で見ると引きちぎるイメージがある字ですよね。
そして、ひちぎりのもちの部分の形状はひきちぎった跡がつけられています。
ひな菓子の色に意味があった!
ひな菓子の色は、赤、白、緑が定番です。
色の感じも柔らかくなんとなく「女の子の節句だから」という理由だと思う人もいるかもしれません。
実は、ひな菓子の色には意味があります。
雛人形にひな菓子をお供えしたら、片付ける日を決めておきましょう。
今が旬の和菓子たち≫ひな菓子の色の意味
さきほどお伝えしたとおり、ひなあられはひしもちを砕いて作ったひな菓子です。
なので、ひしもちもひなあられも色の意味はいっしょです。
ひな菓子の色の意味「赤」
ひな菓子の「赤」はクチナシでつけた赤色です。
クチナシは「解毒作用」があります。赤は「魔除け」の意味を持つ桃の花を表します。
ひな菓子の色の意味「白」
ひな菓子の「白」はひしの実でつけた白色です。
白は清い雪を表し、春の残雪や大地なども表します。
ひしの実は繁殖力が強いため「子孫繁栄」を願います。また「血圧低下」の効果もあるようです。
ひな菓子の色の意味「緑」
ひな菓子の「緑」はよもぎでつけた緑色です。
緑は「健康」を祈り、「草木の若葉」を表しています。よもぎは「増血効果」があり、香りが強いので「厄除け」の意味もあります。
ひなあられは1色プラスして「春夏秋冬」を表す
ひなあられはさきほどの「赤」「白」「緑」に「黄」をたして「春夏秋冬」を表します。
「一年を通して女の子の健康と幸せを祈る」という意味があります。
番外編:ひな祭りに食べられるようになった「さくらもち」
さくらもちとはあんこを生地で包んで桜の葉で巻いたお菓子です。
さくらもちも、ひなあられと同じく東日本と西日本では内容がちがうようです。
東日本のさくらもちは、クレープのように平たくまるい生地であんこをつつみ桜の葉で巻いたものです。あんこはクレープのように巻くのではなく、生地を半分に折りたたんだ状態です。あんこが外側から見えるような包み方ですね。
別名は、「長命寺さくらもち」というそうです。
一方西日本では、ピンク色のもち米であんこを包んだものを桜の葉で巻いたものが定番です。こちらは、おまんじゅうのように完全にあんこを包み込むので外側からあんこはみえません。
もちの状態は、完全につぶを完全につぶさず残します。ですので、もち米のつぶつぶが特徴的です。
西日本のさくらもちの別名は「道明寺さくらもち」と言われています。
「さくらもち」の残念なひな菓子エピソード
今でこそひな祭りに食べられるようになったさくらもち。
さくらもちに関するひな祭りの意味はとってつけたような意味ばかりです。
というのも、もともとはひな祭りのお菓子ではないからです。
さくらもちがひな祭りに取り入れられた残念な理由1/3
さくらもちはひな祭りの桃の節句のイメージとさくらもちの色(赤)が合うということで、ひな祭りに食べられるようになりました。
以上です。
さくらもちがひな祭りに取り入れられた残念な理由2/3
5月5日に「かしわもち」なら3月3日は「さくらもち」となったようです。
以上。
さくらもちがひな祭りに取り入れられた残念な理由3/3 ひしもちも納得いかない
ひしもちよりおいしく、手軽に食べられることから定着していったようです。
ひしもちも、さくらもちも両方おいしいですよね。
ただ、ひしもちの原材料は「もち」。
硬いので、食べるためには煮たり焼いたり味付けしたり、ひと手間かかります。なので、すぐに食べるのにはむずかしいかもしれません。
「ひしもち食べたい」とお子さんに言われても、「はい、ひしもちどうぞ」とはすぐに言えないイメージですよね。
今が旬の和菓子たち≫まとめ
- ひな祭りの伝統的なお菓子は「ひしもち」「ひなあられ」「ひちぎり」
- 「ひなあられ」は「ひしもち」から作られたものだった
- ひな菓子の意味は、女の子の厄をはらい、健康を願い、ひな人形への感謝の気持ちを込めたお供え物
- ひな菓子の色は3色または4色、色には意味があり女の子の健康、成長、魔除けの願いがこめられていた
ひな菓子は、ひな人形へのお供え物です。ひな人形は身代わりとして厄災を引き受けてくれます。なので、感謝の気持ちを込めてひな菓子をお供えしましょう。
ちなみに「さくらもち」のさくらの葉は、食べても食べなくても良いそうです。
出典
人形の東玉 「ひな祭りのお菓子の伝統と、人気のレシピをご紹介!」https://www.tougyoku.com/hina-ningyou/column/hina-matsuri-recipe/hinamaturi-o-kashi/ 参照2022-01-31 |
Precious.jp 「ひな祭りに飾る「菱餅(ひしもち)」の意味|色や順番の由来や、ひなあられとの密接な関係を解説」https://precious.jp/articles/-/17056 参照2022-01-31 |
新谷尚紀.日本のしきたりがわかる本.主婦と生活社,2008,143p.978-4-391-13526-8.参照:2022-01-24 |
白井明大.暮らしのならわし十二か月.株式会社飛鳥新社,2014,143p.978-4-86410-307-7.参照:2022-01-24 |
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