この記事では次のことをお伝えします。
チッコカタメターノのことが知りたい
チッコカタメターノは、千葉県の酪農家が昔から食べられているものです。
そこには酪農家ならではのある事情がありました。
- チッコは「乳っこ」牛乳で、カタメターノは「固めたもの」という意味
- 当時のイタリア料理ブームからヒントを得て名前がついた
- 酪農発祥の地で古くから伝わってきた酪農家ならではの食べ物
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
★もくじ★
チッコカタメターノとは
チッコは「乳っこ」つまり牛乳で、カタメターノは「固めたもの」という意味です。
牛乳を固めたもの=チッコカタメターノ
です。
ちなみに、チッコカタメターノの「乳っこ」は酪農家の間では「初乳」を表していたものと思われます。
チッコカタメターノが作られた経緯
チッコカタメターノが作られた経緯は「もったいない」という理由からです。
子牛が産まれてから飲むことができる母牛の乳は1日に5リットルほどです。
しかし、母牛の出す乳の量は出産当日に10リットル、次の日には15リットルと増え続けていきます。その後も乳量は増え続け、多いときだと60リットルにも及ぶそうです。
母牛の出す乳量は2倍、3倍と増えますが子牛が飲める量はそれほど増えていきません。
また、母牛が出産してから5日ほどまでの乳を「初乳」と言います。
食品衛生法で、市場に出してはいけないと決められています。
そうなると、牛乳があまってしまいますよね。
そこで、酪農家が牛乳を固めて食べはじめたのがチッコカタメターノです。
なので、チッコカタメターノは酪農家にいただいて、なおかつ作り方を知らないと決して食べられない貴重な食べ物だということがおわかりかと思います。
チッコカタメターノの作り方
市販の牛乳【常乳】
市販の牛乳でもチッコカタメターノを作ることができます。
初乳は産後数日の母牛の乳ですが、常乳とは産後10日ほど経った牛乳です。これは、私たち一般消費者が飲んでいる牛乳ということになります。
市販の牛乳でチッコカタメターノを作るときも、初乳同様に沸騰前になったら酢を入れる方法でできます。
なお、メーカーによってチッコカタメターノが完成しない牛乳もあるようです。
市販の牛乳は、なるべく無脂肪、低脂肪を避けて作るほうが成功しやすいそうですよ。
酪農家の特権【初乳】
初乳はさまざまな方法でチッコカタメターノを作ることができます。
理由は、初乳は1日ごとに牛乳の状態が変わるからです。
- 出産当日:濃厚すぎて、そのまま置いていると固まるほど
- 2日目:酢なしで湯煎や蒸すと固まり、乳清は出ない
- 3日目:チッコカタメターノに使われるタイミング
以上です。
初乳でチッコカタメターノを作る方法は以下です。
- 初乳を温める
- 初乳が沸騰する直前に酢を加える
- 酢を加えてから初乳を温める
- 初乳を蒸す
- 初乳を湯煎する
などです。
酢を加える方法では、常乳も同じようにチッコカタメターノができますが、常乳には酢を加えないと固まりませんのでお気をつけください。
チッコカタメターノの食感と味
チッコカタメターノのできたての食感はふわふわとしていて、甘い牛乳の香りが鼻から抜けてきます。
チッコカタメターノの食べ方
チッコカタメターノの食べ方はさまざまあります。
どんな調理法で食べたら良いかをご紹介しています。
また、詳しいレシピが知りたい方は下記もご覧ください。
チッコカタメターノのかたさ調節方法
チッコカタメターノのかたさ調節は、牛乳に酢を入れるタイミングで変えられます。
- 硬め:牛乳沸騰直前に酢を入れる
- 柔らかめ:予め牛乳に酢を入れてから加熱する
以上です。
お好みのかたさを探ってみてくださいね。
乳清まで全て使えるチッコカタメターノ
チッコカタメターノを作るときにザルでこした液体(乳清)も料理に使うことができます。
味は酸味がほとんどないため、あますことなく活用できます。
例えば、
そのままスープや味噌汁の出汁に使ったり、煮物に使ったり、冷やしてコーヒーや紅茶に使ったり、ゼリーや寒天に使うこともできます。
ただし、酢を多めに入れた場合は酸味がありますので、味をみながら少しずつ加えることをおすすめします。
チッコカタメターノとカッテージチーズにちがいはあるのか
チッコカタメターノとカッテージチーズは似ていますが、ちがいはあるのでしょうか。
チッコカタメターノが作られ食べられた地域
チッコカタメターノが作られ、食べられた地域は千葉県の房総半島南部、安房(あわ)地域です。
具体的には鴨川市、館山市、南房総市、鋸南町(きょなんまち)の郷土料理だそうです。
チッコカタメターノのネーミングの由来
チッコカタメターノのネーミングの由来は、1997年結成のNPO法人「大山千枚田保存会」で決まりました。
保存会が発行する会報「あんご通信」で、郷土料理を紹介するコーナー「うめっぺよ」には、2001年7月第9号「初乳を固めたもの」という表現で紹介されていました。
しかし、「会報で紹介するには名前がないと決まりが良くないのでは」と考えた当時の編集者。
そこで、当時の流行であったイタリア料理からヒントを得て「乳っこを固めたの」をイタリア風にアレンジしたのが、「チッコカタメターノ」の名前の由来です。
チッコカタメターノ発信の千葉県は酪農発祥の地
酪農家発のチッコカタメターノですが、安房地域から酪農家が減っていき、次第に食べられる機会は減っていったといいます。
嶺岡(みねおか)の一帯は日本の酪農を牽引する「酪農発祥の地」でした。嶺岡とは千葉県鴨川市と、南房総市の間にある山々のことです。
この地域では、もともと馬を放牧していたそうです。
当時、里見氏が江戸初期まで安芸の国を支配し「嶺岡牧(みねおかまき)」という牧を整備しました。当時は軍馬の育成のための牧場でした。
1614年、嶺岡牧は里見市から徳川幕府に没収されます。
徳川幕府がこの地を再整備し、オランダからペルシャ産馬を取り入れたり、インド産の白牛3頭を加えたりしたそうです。
幕府が酪農を行ったのは、4箇所の牧のうち、嶺岡牧のみだったそうです。
白牛を増やし、牛乳と砂糖を煮詰めた「白牛酪(はくぎゅうらく)」を作り、広めました。滋養強壮、解熱作用に効果があるとして、一般販売もされたそうです。
これが、嶺岡牧の酪農発祥の地である由来です。
千葉県は、文化財に指定しています。
しかし、1911年畜産会社は解散し、土地の一部は県に寄付されて乳牛研究所が建てられました。
明治時代の伝染病でダメージを受けた白牛は尽き、アメリカから輸入された乳牛がメインとなります。そして嶺岡牧の地域は酪農家が集中して、栄えました。
チッコカタメターノは昔からあった先人の知恵
酪農家の人たちは品種改良を繰り返し、優れた牛は北海道へ移されたそうです。
そして、明治から大正期に多くの練乳工場ができ、このときに乳牛の数が増えて、チッコカタメターノが食べられるようになったようです。
牛は、それまで田植えに使用したり、草刈りをさせたりしていたようですが、機械が普及しはじめ、農林水産省の乳牛多頭化政策の影響で酪農家が減っていったといいます。
なので、チッコカタメターノを作る家庭も減っていったのだとか。
それでも、酪農家の家庭では食べられ続けているようです。
チッコカタメターノは希少で栄養価の高い一品
というわけで、酪農家が減るなか、初乳で作られるチッコカタメターノは、希少で栄養価が高い食べ物となります。
家庭でチッコカタメターノを作ることと、感染症との関係
家庭でチッコカタメターノを作ってみましょう。
家庭ではただ、チッコカタメターノを作るだけかもしれませんが、酪農家の方を応援することになるかもしれません。
牛乳は、感染症前まで当たり前のように飲まれていました。
- 学校給食
- 企業
- 飲食店
- 家庭
しかし、感染症対策で生徒が学校に行けなくなり、消費全体が減り、外食も控えるようになり、お家時間が増えました。
つまり、牛乳を買う人が減ってしまったんですね。廃業に追い込まれた酪農家もあったようです。
チッコカタメターノを作ると1リットルから100グラムくらいしか作れません。
しかし、チッコカタメターノを作るために少しでも消費が増えれば酪農家の方々を支援することになります。
牛乳の消費は減りましたが、逆に家庭で料理する機会は増えました。
消費者が買い物のときに、牛乳に目を向けるだけで酪農家へ救いの手を差し伸べることになるのではないでしょうか。
まとめ
- チッコは「乳っこ」牛乳で、カタメターノは「固めたもの」という意味
- 当時のイタリア料理ブームからヒントを得て名前がついた
- 酪農発祥の地で古くから伝わってきた酪農家ならではの食べ物
文春オンライン 「『チッコカタメターノ』って知ってる…?千葉の酪農家に伝わる❝謎のソウルフード❞を食べにいってみた」 参照2022年4月29日
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