この記事では次のことをお伝えします。
お遍路でやってはいけないことが知りたい
もともとは修行の目的で行われていた四国遍路、平安時代(815年)に開創した、弘法大師空海の足跡をたどる巡礼のルートで知られています。
一般市民の霊場巡り(巡礼)がはじまったのは、江戸時代からだそうです。全長1400kmのとてつもなく長い距離を参拝する四国遍路、人々は健康祈願や自分探しの旅などさまざまな目的で訪れます。
お遍路は老若男女宗派関係なく、すべての人がすることができる参拝です。
すべての人が参加できる四国遍路ですが、みなさんが気持ちよく参拝できるようにマナーやタブーなどが存在します。
お遍路の目的である「煩悩を取り除き功徳を得る」ためにやってはいけないこと、守っていただきたいことをご紹介します。
- 参拝するときには基本的な約束事をおさえ、他にも参拝する方がいることを頭に入れる
- お接待してくださる方と札所への対応はわけて考える
- お遍路をするすべての人に共通する目的は「煩悩が取り除かれて功徳を得る」こと
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
四国遍路の参拝手順
四国遍路の参拝手順をざっくりご説明したあとに、順番通りにやってはいけないことをご説明します。
参拝の手順は、まず山門(さんもん)で一礼、手水場(ちょうずば)で心身を清め、鐘楼(しょうろう)で鐘をつき、本堂→大師堂の順番で参拝をします。
そして、納経所(のうきょうしょ)で御朱印(ごしゅいん)をいただきます。
入ってきた山門を出るときにも感謝の意を込めて一礼します。
この手順が参拝の基本的な流れです。
お遍路でやってはいけないこと
上記の参拝の手順をふまえた上で、参拝の手順でやってはいけないことや作法などをご紹介します。
山門では帽子をかぶらない
山門では帽子は脱いでおきましょう。
一方、菅笠(すげがさ)はかぶっていてもOKです。
そして、敷居を踏まないように気をつけて左側を歩いていきます。
手水場(ちょうずば)では柄杓(ひしゃく)柄(え)を清める
手水場は心身を清める場所です。
- 柄杓を右手に持ち水を入れる
- 右手に持った柄杓で左手に水をかけて清める
- 柄杓を左手に持ちかえて右手に水をかけて清める
- ふたたび柄杓を右手に持ちかえて左手に注いだ水を口に含みすすぐ
- 水を左手に流してから柄が下になるように柄杓をたてて、残っていた水で柄を清める
以上が手水場の作法です。
なお、口をすすぐときは柄杓に口をつけないように気をつけましょう。
鐘楼(しょうろう)で優しく鐘をつき、「出鐘」はしない
鐘は巡礼に来たことを仏様にお知らせする行為です。
鐘を突くときは必ず参拝の前に済ませましょう。優しく一度だけつけば良いです。仏様は小さな音でも聞こえるそうです。
また、地域の方々への迷惑にならないようにするための配慮でもあります。
一方、お寺を出るときに突く鐘は「出鐘」または「戻り鐘」と言います。
「出鐘」は葬儀場から火葬場に向かうとき、自動車のクラクションを鳴らす行為と同じ意味を持つようです。なので、鐘をつく行為は縁起が悪いようです。
参拝後に「出鐘」をしてしまったら
もし、参拝後に鐘を突いてしまったら、その後に再度参拝用意と読経を行いましょう。
- 参拝前に鐘を突く
- 参拝用意
- 読経
通常の参拝手順は上記ですが、
- 参拝前に鐘を突く
- 参拝用意
- 読経
- 出鐘
- 参拝用意
- 読経
ちなみに、鐘をつくことができない場所もあるようです。
ロウソクとお線香は手前に置かない
本堂や大師堂では、ロウソクやお線香を立ててお参りします。ロウソクは1本立て、次に線香を真ん中に3本立てます。
お参りするときには、ロウソクやお線香は、奥の方から置いていきましょう。
手前にロウソクやお線香を立ててしまうと、後からきた人が、空いている奥のスペースに置くことになります。そうすると、火傷する可能性がありますよね。
多くの方が使えるようにしたいところです。
火は他の人からもらわない
他の人からロウソクやお線香同士をつけて火をもらわないようにしましょう。
他の人から火をもらうことを「もらい火」といいます。
もらい火の意味は、他の家から出た火事を自分の家も火事に巻き込まれることを言います。
なので、他の人の悪い気をもらってしまうことを意味します。
火をもらう場合は、火がついている他の人の火をもらうのではなく、ライターやマッチ、お寺から種火を譲ってもらって火をつけましょう。
お賽銭は徳を積むこと
お賽銭することは徳を積む(良い行い)一つの行為です。
なので、お遍路を参拝しているにもかかわらずお賽銭をしないことは、良い行いができていないことになります。
なので、お賽銭をして徳を積みましょう。
お賽銭は投げ入れない
お賽銭をして気持ちを伝えましょう。
お賽銭をするときは投げ入れないようにして静かに賽銭箱に納めます。
合掌するときは手をたたかない
合掌するときは手をたたかないように優しく手を合わせましょう。
手は、右手が仏様、左手が自分を表しています。
両手を合わせることで仏様とひとつになる意味を持ちます。手をたたくとお互いがぶつかってしまいますよね。
なので、そうならないように手は優しく合わせましょう。
ちなみに合掌(がっしょう)はお寺で行うことで、柏手(かしわで)は神社で行うことです。
お遍路はお寺を回ることなので、前者の合掌を行いましょう。
読経(どきょう)するときは端をえらぶ
読経するとき菅笠以外、帽子は取り数珠を持って読経します。
読経は時間がかかります。
なので、参拝者が多い場合には端の方から読経していきましょう。
その他のケースでやってはいけないこと
その他お遍路でやってはいけないことをご紹介します。
お接待はことわらない
お接待はことわらないようにしましょう。
お接待とは、地元の方からお茶やお菓子などを恵んでもらうことを言います。ときには宿泊をさせていただける場合があります。
お接待してくれる方は、自分の身代わりになって参拝を頼むという意味があります。
なので、お接待はことわらないのが礼儀のようです。
お接待を受けたとき納札(おさめふだ)に願いごとを書かない
お接待を受けたときは納札の裏側に願いごとは書かないようにしましょう。
納札は、お接待を受けたときのお返しです。なので納札の裏に願いごとを書くのは道理にはずれています。お接待していただいた人に対して、自分の願いごとの気持ちを渡す行為になってしまいます。
ちなみに納札に願いごとを書くのは、本堂や大師堂で参拝したときに「仏様」に対してお願いします。
納経所で両替をお願いしない
両替は納経所で両替をお願いせず、事前に両替しておきましょう。
お寺によって対応がさまざまなようですが、お遍路でお賽銭をすることは事前に頭に入っているはずです。なので、事前に両替を済ませておきましょう。
逆に、両替を受け付けているお寺では歓迎されるようです。
お遍路の正装から考えるやってはいけないこと
お遍路では、自由な服装で参拝できますが、決められた服装で参拝する(正装)方法もあります。
上(頭)の方から説明しますと、菅笠、輪袈裟、白衣、持鈴、金剛杖を身に着けます。
- 菅笠(すげがさ)→竹でできた笠。日除け、雨除けの機能を併せ持つ
- 輪袈裟(わげさ)→首からかける法衣のこと
- 白衣(びゃくえ)→死をも覚悟する現れである、お遍路ならではの正装
- 持鈴(じれい)→魔除けや安全にお遍路ができるように白衣や持ち物につける
- 金剛杖(こんごうづえ)→1m以上ある木製の杖。弘法大師の化身。お遍路から自宅に帰るまで一緒に行動する
お遍路の正装をふまえたうえで、やってはいけないことや守りたいことをお伝えします。
金剛杖は弘法大師の身代わり
弘法大師の身代わりと言われている大切な杖です。弘法大師と一緒に歩いている意味があり、このことを「同行二人」と言います。
なので金剛杖を弘法大師だと思い、大切に扱いましょう。
そして、必ず自宅まで持ち帰りましょう。
橋の上で金剛杖を突かない
橋の上では杖を突かないようにしましょう。
理由は、橋の下は神聖な場所だからです。
昔、弘法大師が橋の下で眠っていたという言い伝えがあります。なので、橋の上では杖を突かないのが決まりのようです。
トイレに輪袈裟(わげさ)や金剛杖を持って行かない
輪袈裟や金剛杖は神聖なものです。輪袈裟や金剛杖などを仏具といい、仏具には仏様がいらっしゃるとされています。
なので、トイレには輪袈裟や金剛杖を持って行かないようにしましょう。
ちなみにトイレに仏具を持っていったら、運気が下がると言われています。
もしトイレに行きたくなったら、トイレの前にある棚の上に道具を置いたり、他の人にお願いしてから行きましょう。
宿ではまっさきに金剛杖を清める
宿に到着したら、まずは金剛杖を清めましょう。
金剛杖は弘法大師の化身(けしん)、つまり生まれ変わりです。
神聖なものです。なので、宿に到着したらすぐに金剛杖を清めましょう。。
食事のときは、輪袈裟を外す
食事のときは、輪袈裟を外しましょう。
足元ではなく、机の上に置くようにします。
古くから伝わるお遍路さんの心得
四国遍路をするにあたって、古くからルールが定められています。
これらにのっとって気持ち良いお遍路になるよう心がけましょう。
十善戒(じゅうぜんかい)
- 不殺生(ふせっしょう):殺生をしてはいけない
※殺生=生き物を殺す - 不偸盗(ふちゅうとう):盗みをしてはいけない
- 不邪淫(ふじゃいん):淫らなことをしてはならない
- 不妄語(ふもうご):偽りを言ってはならない
- 不綺語(ふきご):言葉に虚飾があってはならない
- 虚飾(虚飾)=内容がなく見せかけだけ
- 不悪口(ふあっく):悪口を言ってはならない
- 不両舌(ふりょうぜつ):二枚舌を使ってはならない
- 二枚舌=矛盾や嘘をつくこと
- 不慳貪(ふけんどん):強欲であってはならない
- 不瞋恚(ふしんに):怒ってはならない
- 不邪見(ふじゃけん):よこしまな考えを起こしてはならない
※よこしま=正しくない心
三信条(さんしんじょう)
常に弘法大師とともに巡拝し、大師の救済を信じることが肝心である。
巡拝は、旅そのものが修行であるから、心やすらかに過ごさなければならない。
現世利益とは、仏によってこの世で救済されることをいい、お金が儲かることではない。札所をめぐることで88の煩悩を消し去り、悟りをめざそう。
お遍路に臨む際心がけたいこと
お遍路の目的は人によってさまざまですが、すべてを参拝することで「煩悩が取り除かれて弘法大師の功徳(くどく)を得る」ことが共通の目的です。
功徳とは、よい報いを生み出す原因としての善行を積むことによって身に受けたり、現世・来世に幸福をもたらすもとになる善行のことです。
お賽銭をしたり、感謝の気持ちを込めるには、心に余裕がないとできないことです。
なので、例えば「四国八十八か所巡りをいかに速く達成するか」といった強行スケジュールでは以下のようなことが起こります。
- 参拝に気持ちが込もっていない
- しきたりをカットする
- お接待をことわる
上記のようなことがないように、心をやすらかにするお遍路にしたいですね。
まとめ
- 参拝するときには基本的な約束事をおさえ、他にも参拝する方がいることを頭に入れる
- お接待してくださる方と札所への対応はわけて考える
- お遍路をするすべての人に共通する目的は「煩悩が取り除かれて功徳を得る」こと
冒頭でもお伝えしましたが、四国遍路の目的は「煩悩を取り除き功徳を得る」ことです。
これはすべての人にあてはまります。
弘法大師と同行二人でのお遍路を心穏やかに参拝しましょう。
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%9F%E5%BE%B3 参照2022/06/15
黒田茂夫 『四国八十八か所 お遍路の旅』旺文社 2019年 参照2022/06/15
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