この記事では次のことをお伝えします。
油絵の洗浄液の使い方が知りたい
油絵の筆はどのように洗えばよいのでしょうか?
他の絵の具とは違い、油絵具は画溶液で絵の具を溶かし、絵を描きます。
また、油絵具も画溶液もオイルなので、油絵の制作中はどうやって洗えば良いのか、またその日の制作が終わったら何で洗うのかもわからないと思います。
油絵具がついた筆を放置すると、ガチガチに固まってしまい、場合によっては再起不能になってしまいます。
そうなる前に、日々のメンテナンスを心がけて、いつでもベストコンディションの状態で油絵を描きましょう。
今回は、いつでも快適に筆を使うための洗浄方法をご紹介します。
- 油絵の洗浄液の使い方には、筆洗油と筆洗器が必須
- 制作中は筆洗油の成分を絵につけないように注意
- 筆洗油の捨て時は臭いやのごり具合から判断する
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
★もくじ★
油絵の洗浄液に使う道具と材料
まずは、油絵の洗浄液の使い方で必要な道具と材料のご紹介です。
- 筆洗器
- 筆洗油
- ティッシュ(またはボロ布・キッチンペーパー・新聞紙など)
- 水
- ビニール袋(小さめ)
- 石けん(または水性の洗浄液、食器用洗剤など)
以上です。
油絵の洗浄で気をつけること
油絵具の筆やナイフは、水では洗い落とすことができません。
理由は、水には溶けないからです。
特に、制作中は水を使ったらその筆では油絵が描けなくなってしまいます。
油絵具を溶かすことができるのは油、つまり「筆洗油(ひっせんゆ)」というもので洗うことになります。
水彩画やアクリル画を描くときはバケツに水を入れて使い、毎回水を捨てて作業が終了しますが、油絵の場合は予め筆洗器という容器をそろえて、その容器の中に筆洗油というものを入れて筆を洗い、制作のたびに捨てずに筆洗油が汚れるまで繰り返し使います。
ですので、必ず専用の筆洗器と筆洗油を使いましょう。
油絵の洗浄液は主に2つある
油絵の洗浄液は主に2つあります。
- 制作途中に使用する筆洗液
- 後片付けのときに使用する筆洗液
以上です。
なお、制作途中に使用する筆洗液は「油性」
後片付けに使用する筆洗液は「水性」です。
石油系の筆洗液
筆を洗うために作られている石油を精製した溶剤です。
石油系の筆洗油は最も利用されている筆洗液です。
石油を精製して作られた液体です。筆を洗うことを目的に使用され、筆洗油として最も一般的な筆洗液です。
石油系の筆洗液は、以下のようなものです。
- ブラシクリーナーLT(油絵制作中・制作後の洗浄)
- クサカベ ブラッシクリーナー
水性系の筆洗液
界面活性剤の作用で筆についた油絵具を落とすのが、水性系の筆洗液です。
油ではないので燃える心配はありません。
ただし、水で洗い流す必要があるので油絵制作途中の使用はおすすめできません。
ですので、「今日はもう何も作業しないよ」という作業後、次回のために清潔に保つ目的で使用します。
水性系の筆洗液は以下のようなものがあります。
- スーパーマルチクリーナー(制作後の洗浄)
- アプト
スーパーマルチクリーナーは、その名の通り油絵具だけでなく、アクリル絵具や水彩絵具などにも使用します。固まった筆もつけて置いておくことで再び使用できるようになる優れものです。
水性系の筆洗液は、石油系の筆洗液で筆の汚れを落とした後に使うと良いですね。
または、水性系の筆洗液を使わずに石けんや食器用洗剤を仕上げの洗浄として使うのも良いです。
なお、水性系の筆洗液の使用には、以下のような注意が必要です。
- 水性系の筆洗液の使用は制作後だけにする
- 油絵の制作途中で使用する場合は水でしっかりすすぎ、筆をしっかりと乾燥させる
ということで最低限、筆洗液と筆洗器だけ持っていれば油絵を描くことができるし、制作途中に筆を洗うことができます。
あとは制作後に石けんを使って洗えば良いですからね。
臭いが気になる人は油絵を描けないのか?
石油系の筆洗液は石油のような独特な臭いが漂います。
そんな方には、無臭タイプの筆洗液がおすすめです。
無臭タイプの筆洗液は、石油独特の臭いを取り除いた筆洗液です。石油系の筆洗液の臭いが気になったり、気分が悪くなったりする人の悩みを解決してくれる筆洗液です。
石油系の筆洗液の臭いがどうしても気になる方は、無臭タイプの筆洗油を試してみると良いです。
ただし、普通のタイプよりも洗浄力は弱めです。
注意として、臭いがする・しないに限らず油絵制作のときには必ず換気をしましょう。
無臭タイプの筆洗油は、以下のようなものです。
- オドレスブラシクリーナー(油絵制作中・制作後の洗浄)
- クサカベ 無臭クリーナー
ちなみに、水性系の筆洗液は特に臭いは感じられません。
筆洗器の構造
筆洗液の説明が終わったので、今度は筆洗器の構造についてご説明します。
一般的な筆洗器の構造についてですが、本体にはフックがついていて、フックのレバーを上に上げるとフックが外れて蓋を開けることができます。
蓋を開けると裏側にゴムパッキンが付いています。
本体についたフックと、蓋についたゴムパッキンのおかげで蓋を締めているときに倒れても中身がこぼれない構造になっています。
中には、丸い穴が開いている容器が入っていて、本体とは別で取り外せるようになっています。
穴が開いている容器は、さまざまな仕組みのものがありますが、筆洗器は大体このような仕組みをしています。
筆洗器本体と、穴が開いた容器は深さが違います。
穴の開いた容器の深さが、本体の容器よりも浅い位置にあるため、穴の開いた容器の下に顔料や汚れがたまり、穴の開いた容器の上に澄んだ画溶液が残る仕組みです。
筆洗器で筆を洗うメリット
筆洗器で筆を洗うメリットは、常に透明のきれいな液体が使えるということです。
どういうことかと言いますと、筆についた油絵具は筆洗器で洗うと一時的には筆洗油がにごりますが、時間がたつと汚れや顔料は下に沈みます。
顔料は、筆洗油の中で浮遊せずに落ちるようになっています。
ですので、次回油絵の制作のときに静かに筆洗器を開けると、透明で澄んだ液体が見えるはずです。
これは、本体と穴が開いた容器の高さが違うためです。
もし、穴が開いた容器がないと、毎回下にたまった汚れをかき回してしまうことになります。
これでは筆を綺麗に洗うことができません。
ですので、本格的に油絵を描いていくのなら、筆洗器は必要です。
筆洗器を選ぶポイント
筆洗器を選ぶポイントは、以下です。
- 本体と穴が開いた容器が分かれているもの
- 蓋がついているもの
- ゴムパッキンがついているもの
- 本体にフックがついているもの
本体と穴が開いた容器が分かれているもの
筆洗器は、本体と穴が開いた容器が分かれているものを選びましょう。筆洗器を使い込むと、結構汚れます。本体や中の容器を掃除するとき、容器が分かれないと綺麗に掃除することができません。
その後の洗浄力に影響してきます。
ですので、できれば本体と中の容器が分かれた筆洗器を選びましょう。
蓋がついているもの
筆洗器は、蓋がついているものを選びましょう。
なかには蓋そのものがない筆洗器もあります。
そのような筆洗器は、水彩画やアクリル画仕様だと思います。
ですので、空気と触れて筆洗油の量が減らないように蓋がしっかりと密閉できるものをおすすめします。
ゴムパッキンがついているもの
蓋に、ゴムパッキンがついている筆洗器を選びましょう。
蓋はあるけれど、ゴムパッキンがついていない筆洗器もあります。
ゴムパッキンがあることによってしっかりと密閉し、筆洗油が外に漏れ出ないようにしてくれます。
本体にフックがついているもの
本体にフックがついている筆洗器を選びましょう。
蓋のゴムパッキンと、本体のフックのダブルの効果でしっかりと蓋を締めることによって、筆洗油が空気に触れるのを防ぎ、揮発せずに済みます。
揮発しないということは、長く使えるということに繋がり、経済的です。
洗浄液を使った油絵の筆の洗い方
ここからは、洗浄液を使った油絵の筆の洗い方をご紹介します。
手順は、以下です。
- 筆洗器に筆洗油を入れる
- 筆についた油絵具を取る
- 筆を洗う
- 筆についた筆洗油を落とす
順番に解説します。
1.筆洗器に筆洗油を入れる
まずは、筆洗器に筆洗油を注ぎ入れます。
筆洗油は、穴が開いた容器の上まで注ぎ入れます。
筆を入れて洗うときに筆の穂の根元が浸かるくらいまで、筆洗油を入れると良いです。
2.筆についた油絵具を取る
筆洗油を筆洗器に注ぎ入れたら、筆でについた油絵具を取り除きます。
ティッシュやキッチンペーパー、ボロ布などでしっかりと除去します。
拭き上げたティッシュなどは、ビニール袋に入れましょう。
3.筆を洗う
筆から油絵具を拭い取ったら、筆洗油に筆を浸けて洗います。
穴が開いた容器の、穴と平らな部分を滑らせて洗い落としましょう。
筆によって穂先が変形してしまうものもあるので、力を入れすぎずに優しく洗いましょう。
とくに柔らかい筆は要注意ですね。
4.筆についた筆洗油を落とす
最後に、筆についた筆洗油を落とします。
筆洗器の穴が開いている容器には、棒がついています。
その棒に筆を押し当てて余分な筆洗油をしごいて落とします。
その後、ティッシュなどで筆洗油を拭き取ります。
なお、筆洗油は空気に触れていると気体になり、いずれ乾いてしまいます。
ですので、必ず蓋を閉めて密閉させましょう。
以上が油絵の洗浄液の基本的な使い方です。
油絵具の色を替えるときの洗浄液での筆の洗い方
続いて、制作途中で油絵具を替えるときの筆の洗い方をご紹介します。
例えば、「赤」から「青」に替えるときなどですね。
手順は、以下です。
- 筆洗器に筆洗油を入れる
- 筆についた油絵具(赤)を取る
- 筆を洗う
- 筆についた筆洗油を落とす
- 揮発性油に浸ける
- 筆についた揮発性油を落とす
- ペインティングオイルや乾性油などを筆につける
- 油絵具(青)を筆につける
以上です。
1~4までは、先ほどの「洗浄液を使った油絵の筆の洗い方」と同じです。
ポイントは、「5」からです。
5.揮発性油につける
筆についた筆洗油をティッシュなどで落としたら、揮発性油につけます。
筆洗油がついたままで油絵を描くと、油絵具が乾きにくかったり、筆洗油の成分が絵に混ざってしまうので良くありません。
ですので、筆洗油で筆を洗ったあと、描画で使っている揮発性油に浸けることで筆洗油が洗い流されるので、安心して油絵を描くことができます。
ちなみに、揮発性油は「テレピン(ターペンタイン)」や「ペトロール」のことです。
6.筆についた揮発性油を落とす
揮発性油に浸けたあと、余分な揮発性油をティッシュなどで拭って落とします。
7.ペインティングオイルや乾性油などを筆につける
揮発性油を落としたら、ペインティングオイルや乾性油などを筆につけます。
8.油絵具(青)を筆につける
油絵具(青)を筆につけます。
これで、筆についた油絵具の洗浄が終わり、色を変えることができました。
油絵を描くとき、色を変える場合は上記のように洗浄していきましょう。
筆洗油の成分が気になる方
筆洗油の成分は、揮発性油とは違います。
「筆洗油で洗った後に揮発性油で洗い流したとしても、絵に筆洗油の成分が残るのではないか」と思う方がいるかもしれません。
それくらい気になるのであれば、はじめから揮発性油を筆洗器に入れる方法もあります。
その方法が下記です。
- 筆洗器に筆洗油(揮発性油)を入れる
- 筆についた油絵具を取る
- 筆を洗う
- 筆についた筆洗油(揮発性油)を落とす
以上です。
一番はじめの「洗浄液を使った油絵の筆の洗い方」の「筆洗油」部分にカッコ書きで揮発性油を入れただけです。
これで、油絵に筆洗油の成分が入ってしまうことはなくなります。
筆洗油と揮発性油の違い
筆洗油に筆洗油を使う場合と、揮発性油を使う場合との違いは、以下です。
- 値段
- 洗浄力
値段は、
筆洗油<揮発性油
また、洗浄力は、
筆洗油>揮発性油
です。
洗浄力は推測ですが、筆を洗浄できるように作ったのが筆洗油なので、筆洗油のほうが洗浄力が優れているのではないかと思っています。
油絵制作後の筆の洗い方
筆洗油を使ってもすべての油絵具を取り除くことはできず、まだ筆に残っている場合があります。
その取り切れなかった汚れを、石けんと水で洗浄して筆を清潔に保ちます。
筆洗油を捨てる方法
筆洗油を長く使っていて捨てようか検討している場合、いつでも上の方は澄んだ状態なのでその判断に迷うかも入れません。
そんなときは穴が容器を取り外してみて、油の臭いや濁り具合などをみて判断します。
筆洗油は、上の透明の部分は使用できるので一時的に別の容器に入れておきます。
そして、残った汚れている液体だけを取り除きます。
ビニール袋にティッシュやキッチンペーパー、また古紙を細かく刻んだものなどを入れ、その中に汚れた筆洗油を入れます。
ビニール袋に入れた廃液は、水を含ませて、しっかりと袋の口を縛り密閉させます。
ゴミの処分方法は、一般的には「燃やせるごみ」ですが、お住まいの自治体の処分方法に沿って処分しましょう。
筆洗油を捨てる頻度を少なくする方法
筆洗油がなるべくにごらないように長く使う方法は、あらかじめ筆についた油絵具をなるべくティッシュなどできれいに拭き取ることです。
油絵具が筆についたまま、筆洗油につけることもできますが、ティッシュなどで拭い取らないときよりも筆洗油に溶け出した顔料の量が増えてしまいます。
ですので、にごりが早くなり、筆洗油を交換する頻度が高くなってしまいます。
筆洗油を交換する頻度が高くなるので、経済的にもあまり良くありません。
ですので、筆洗油を長持ちさせたければ事前にティッシュなどで筆についた油絵具をしっかりと取り除いておきましょう。
まとめ
- 油絵の洗浄液の使い方には、筆洗油と筆洗器が必須
- 制作中は筆洗油の成分を絵につけないように注意
- 筆洗油の捨て時は臭いやのごり具合から判断する
今回は、油絵の洗浄液の使い方をご紹介しました。
油絵を描こうか迷っている方は、ぜひ今回のやり方で洗いながら描いてみてくださいね。
今日も楽しく油絵を描いていきましょう。