この記事では次のことをお伝えします。
- 「スーツ規定違反」とは、スキージャンプにおいて「直立姿勢時のスーツと体の密着度」に違反することで、男子は1~3センチ、女子は2~4センチが規定
- 高梨選手は、太もも周りが2センチ大きく、他4名も「スーツ規定違反」
- メダルか失格か、浮力が影響するのでスーツのサイズも競技のうち。各国ギリギリに攻めている
- 体重の維持、水分補給、筋肉の収縮にも気を遣う競技
- 今までとはちがう測り方で失格の選手も
★もくじ★
スーツ規定違反とはなにか
「スーツ規定違反」は国際スキー連盟(FIS)の規則によると、
「スーツ規定違反」とは、「直立姿勢で、スーツ寸法はボディーと一致しなければならず、最大許容差はスーツのあらゆる部分において、ボディーに対しプラス1センチ~3センチ(女子は同2~4センチ)とする」
と決められているようです。
シーズンの初めに計測し、計測結果を提出するようですね。
しかし、当然時間が立つと誤差が出てきます。
なので、スーツ規定違反は珍しいことではないようです。
近年では2021年2月のW杯で高梨選手が失格。また、男子スキージャンプの小林陵侑(りょうゆう)選手も今季のW杯で失格していました。
今回の高梨選手のスーツ規定違反箇所
日本オリンピック委員会の鷲澤徹(わしざわとおる)コーチは「太もも周りが2センチ大きかった。」と言っていました。
ということは、体の数値からプラス6センチになっていたということになります。
ちなみにノーマルヒルのときに着ていたものと同じスーツだったそうです。
高梨選手だけではない、他の選手の失格
スキージャンプの混合団体では、高梨選手だけではなく他の国の選手も失格していました。
1回目のジャンプではオーストリア、ドイツの選手が各1名
2回目のジャンプでノルウェーの選手2名
合計5名の選手が失格しました。
なぜ違反になるのか、メダル争いの宿命
では、なぜ違反になるのでしょうか。そこにはスキージャンプのシビアな駆け引きがあるようです。
メダルか、失格か
日本オリンピック委員会の鷲澤徹コーチは「オリンピックなのでスーツもギリギリを攻めている。」と言います。
また、同委員会の横川朝治コーチは「空気が薄く浮力も得にくいため、スーツの大きさが飛距離に影響を与えやすく、メダルを争う競合が規定ギリギリのスーツを着用するケースが多い。」とも。
スーツの性能によっては数メートル以上も差が出るとのことです。
特にメダルを期待されている選手は飛距離を伸ばすためになるべく浮力を得たいはず。そうなると、必然的に規定ギリギリに攻めて行かないといけない現状があるようですね。
屋外での調整の難しさ
北京オリンピックの試合会場の標高は1650メートル。混合団体の1回目のジャンプは午後8時ごろでマイナス10度ほどだったといいます。湿度は38パーセントでした。
伊藤有希選手は「体重が落ちて調整が難しかった」と言っていたそうです。
空気が乾燥すると体の中の水分が外に出やすくなり、筋肉の収縮も起こるのだとか。
風、寒さによる浮力低下、気温による体内水分の放出、さまざまな条件を加味しながらギリギリまで神経を使う競技だということがわかりますね。
五輪経験のある解説者も唖然
五輪出場経験のある竹内択さんは、相次ぐスーツ規定違反による失格に唖然としていたようです。
「もう何と言うんでしょうね…。1人が、ということはあるんですけど、ドイツも、オーストリアもという…今までW杯でもないような試合展開ですね」
そして、スーツのことについては、
「考えられるのはスーツのどこかの箇所が大きくて失格ということではないか。なかなかスーツを、毎回その日に合わせるのはすごく大変。」
既定のスーツに体を合わせることの難しさを伝えています。
高梨選手は混合団体の2回目にスーツを着替えたようですが、微妙にサイズの違うスーツを何枚も持っていけないですよね。
今までとちがう測り方が行われていた
2回目のジャンプでスーツ規定違反を受けたノルウェーのシリエ・オプセット選手は「今までの測り方とちがう」と訴えていたようです。
「彼らは全く異なる方法でスーツを測定していて、これまでは違う方法で立つように言われた」
今回、シリエ・オプセット選手が言った測り方と他の選手も一緒だったのでしょうか?
この場合、計測方法が同じだったとしても、また違ったとしてもどちらも問題があるはずですよね。
なぜなら北京オリンピックでは、今までとは別の方法で測定したからです。
今後のスキージャンプ「スーツ規定」のあり方
- 試合前の入念な検査のみ
- 検査方法の統一
この辺をお願いしたいですよね。
公平を重んじるオリンピック、競技が終わった後にチェックして失格というのは4年間入念にトレーニングした選手が無念です。
その場限りの測定方法で選手生命が左右される可能性があるからです。
競技の前のみの検査だったら着替えられますからね。
日本の結果と、失格しなかった場合の結果
北京オリンピックのスキージャンプ混合団体は10チームの参加で、チームは男女2人ずつ合計4人が出場しました。
日本は男子個人ノーマルヒルで金メダルだった小林陵侑、同じく32位だった佐藤幸椰、女子個人ノーマルヒルで4位だった高梨沙羅、同じく13位の伊藤有希が出場していました。
1回目は8位ギリギリで決勝進出。
2回目の追い上げで4位となりました。
もし仮に1回目の高梨選手のジャンプが認められていれば、124・5点を獲得し、合計960・8点で2位になっていたことになります。
日本の「スキージャンプ混合団体」戦績
今までの日本の「スキージャンプ混合団体」の戦績です。
世界選手権2013年初代王者
2015年銅メダル
2017年銅メダル
2019年5位
2021年5位
北京オリンピック
2022年4位
上位をキープしています。
情報が遅れている国だとしても、素晴らしい成績です。
まとめ
- 「スーツ規定違反」とは、スキージャンプにおいて「直立姿勢時のスーツと体の密着度」に違反することで、男子は1~3センチ、女子は2~4センチが規定
- 高梨選手は、太もも周りが2センチ大きく、他4名が「スーツ規定違反」
- メダルか失格か、浮力が影響するのでスーツのサイズも競技のうち。各国ギリギリに攻めている
- 体重の維持、水分補給、筋肉の収縮にも気を遣う競技
- 今までとはちがう測り方で失格の選手も
人生をかけた大勝負をしている選手たちの想いは4年間に詰まっています。
たった20秒ほどの競技のためにかけた手間暇は力となるかもしれませんが、戻ってきません。
「今までと同じ測定方法で測るのが運営委員のルールなのでは?」と疑問が残る結果となりましたね。
涙を流して競技する選手を見たのは今回が初めてでした。
高梨選手のジャンプは男子顔負けの素晴らしいジャンプでしたね。今回の結果は不運としか言いようがありません。
教訓として、日本も失格した他国のスタッフも特にスーツには目を光らせてくるのではないでしょうか。
高梨選手のジャンプは4年間の練習の成果が大きく発揮されました。とても綺麗なジャンプを見せてくれました。
- NHK ジャンプ 高梨沙羅 スーツ規定違反 高知での調整に難しさが https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220207/k10013472441000.html 参照2022年2月9日
- 日刊スポーツ 【ジャンプ】高梨沙羅がスーツ規定違反でまさか失格 1番手で大ジャンプ後に泣き崩れ控室に… https://www.nikkansports.com/olympic/beijing2022/ski_jump/news/202202070001182.html 参照2022年2月9日
- 中スポ 「飛んだ後に抜き打ちで検査」テレビ解説の竹内択さん”高梨失格”に「珍しいケース」【北京五輪ジャンプ混合団体】 https://www.chunichi.co.jp/article/414354 参照2022年2月9日
- THE DIGEST スーツ規定違反続出の”茶番劇”に各国から困惑と怒りの声「いつもの測り方じゃない」「説明が無かった」【北京五輪】 https://thedigestweb.com/topics_detail13/id=52254 参照2022年2月9日
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