この記事では次のことをお伝えします。
油絵の初心者に最適なモチーフが知りたい
初めて絵を描くけれど、何を描いたら良いかわからないかと思います。
モチーフの探し方や、作り方、人物画を描くときの依頼のやり方をご紹介します。
- モチーフのネタが少なくても、オリジナルで身近にある描きたいモチーフで描こう
- 迷ったらまず静物画、外に出たら風景画、自分を描けば人物画が描ける
- 身近なモチーフで重要文化財に指定された絵がある
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
★もくじ★
油絵の初心者、モチーフは何が良いか
油絵の初心者が描くモチーフは何が良いでしょうか。
結論として、モチーフのネタが少なくても、身近にある描きたいモチーフで描けば良いと思います。
描きたいものを描く理由
描きたいものを描く理由として、たとえば、あなたが人物画が好きだとします。友だちも少なく、家族とも離れているので、仕方なく自画像やパーツなどの絵を展示したとします。
個展にきたお客様に「人物画が好きなんです。」と言うことによって、それが広まりお客さまや、お客さまの知り合いから「モデルになりたい」と名乗り出る方がいるかもしれないからです。
なので、「好きなものは好き」と公言していれば、それが舞い込んでくる可能性があるかもしれません。
これは「友だちがチョコレートが好きだから、差し入れにチョコレートを持っていく」ようなことに近いと思います。
それらを踏まえた上で、身近なものでなるべく自宅で完結するものからご紹介します。
静物画(せいぶつが)
初めて油絵を描く場合、迷ったらまず静物画を描けば良いかと思います。
ちなみに静物(せいぶつ)とは、
静止して動かないもの
引用元:goo辞書
です。
そして、静物画とは、
西洋画のジャンルのひとつで、切り花や果物、器(うつわ)といった、それ自体は動かないものを卓上に自由に配置して描いた絵のこと
引用元:This is Media
です。
器はわざわざ買わなくても、ご家庭にひとつはあるものだと思います。もちろん油絵用に購入しても良いかと思います。器を描くだけでも絵になりますし、器の上に果物を置いても絵になります。
テーブルの上に器や果物を配置して絵を描けば立派な作品になります。
ひとつの器と果物をいくつかのパターンで配置すれば、さまざまな構図の絵を描くことができます。
また、果物をカットして断面を見せると見え方が変わります。
もし、日中に絵を描けないのであればダンボール箱でモチーフを入れるための小さなスタジオを作りましょう。安めのライトを購入してオレンジ色の光や蛍光灯の光などで調光すれば、自由に光とカゲを作り出すことができます。
さらにそれをカメラで撮影すれば、何度でも同じ絵を複製することが可能です。
このように器や果物、ビンやおもちゃなど自宅にはさまざまなモチーフが転がっています。
ちなみに筆者は、
- カップ
- グラス
- フォーク
- スプーン
- おもちゃ
- 色紙
- 化粧品のビン
- 生花
- 造花
- みかん
などをモチーフにして油絵を描きました。
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ちなみに色紙は厚紙にアクリル絵の具の単色を塗って複数枚用意しました。色紙を配置することによってさらに配置の選択肢が増えます。
モチーフの配置は、単体または複数組み合わせることでさまざまなパターンが可能です。
また、例えばカップの角度によってさまざまな表情にすることができます。フォークやスプーンも立てたり横に配置したりすると表情が変わります。
このように、静物画は自分から能動的に準備したり、配置することができます。
たとえ果物を購入したとしても何日か使用することができます。また、使用しなくなったら食後のデザートとして食べることができます。
もし、モチーフを複数パターン配置したらカメラで撮り溜め、あとで描くことも可能です。
そういった意味で静物画はおすすめです。
人物画
続いて人物画です。
人物画で身近なものといえば、自画像です。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ」や「ヤン・ファン・エイク」、「ゴッホ」など有名な画家は自画像を残しています。
また、自画像を販売する画家もいらっしゃいます。
自画像は、自分の顔を見ながら描くことができます。恥ずかしいと思ったら写真を一枚撮って描くことも可能ですね。
自分の顔を描くために、顔の角度やポーズ、照明のあて方などが勉強になります。
自分の姿を描くのが嫌な場合は、家族を描いてみる方法もあります。また、親友や知り合いなどにお願いして写真を送ってもらう方法もあります。
顔がNGの場合、後ろ姿だったらハードルが下がりますよね。
また、自分の身体のパーツを描いたり、家族や知り合いにお願いして描いてみることもできるかと思います。
その際、指定があればポーズをお願いしたり、ライティングの色や角度をお願いしたりすると、こだわった絵が描けますね。
このとき自画像の撮影を経験していると、どのように撮ってほしいか細かく指示できると思います。
自分以外の人物画を描く場合は、あらかじめ個展や公募展で絵を使用することを許可してもらった上でモデルをお願いしましょう。
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風景画
自宅から一歩外に出ると、風景が広がります。
道端、公園、花、雲、夕焼け、建物、夜景などなど、カメラ片手に休日に散歩してみると身近なものでもさまざまな発見があります。
こちら側がアンテナを張っているから当然ですよね。
赤いものを見つけると決めたら、赤い色が飛び込んでくるイメージです。
いかに、今まで無意識に散歩していたかがわかると思います。
なお、撮影時には、ゆがみ、ピンボケ、ブレがないようにしましょう。
ちなみに、ピンボケやブレを油絵にするのも個人的にはありだと思います。
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身近なものでも絵になるし重要文化財にもなり得る
身近なものでも絵になります。有名な画家でも身近なものをモチーフに絵を描いている場合があります。
また、なかには身近なモチーフで重要文化財に指定された絵もあります。
静物画
高橋由一(たかはしゆいち)「鮭」「豆腐」
洋画家の高橋由一は、静物や風景などを中心に描いた画家です。豆腐は夕飯の前にカメラで撮影するだけでモチーフに早変わりです。
風景画
次に風景画です。これからあげる絵は重要文化財に指定されている絵です。
- 岸田劉生「道路と土手と塀」
- 川合玉堂「行く春」
- 横山大観「生々流転」
道や土手、塀や桜、川や海など、身近に見るものでも重要文化財に指定されている絵です。
なにも重要文化財を目指す絵を描く必要はありませんが、日常の風景に近いモチーフを描いた場合でも、重要文化財になり得る価値があるということです。
何を油絵に反映させるか
油絵を描くときは、道具や材料の使い方をある程度学んでおく必要があります。
また、それとは別に構図、陰影、グラデーション、ツヤ、ハイライト、直線、曲線、透明感、箇所ごとの色を反映させます。
構図
構図が悪い場合は、実物を配置しなおしたり、写真の場合は切り貼りして設定し直します。
構図は一度決めてしまったら、なかなか修正できないので慎重に行いましょう。
陰影、グラデーション、ツヤ
屋外では時間とともに太陽が角度を変えます。それにともない、モチーフの色や影の形が変わります。
一方、自宅の室内でスタジオを作った場合は、光のコントロールが可能です。部屋を暗くしてライトを当てれば一定の光を得ることができます。また、電球の色によって独特の世界観を作り出すことが可能です。
- モチーフ自体の陰(かげ)
- モチーフに当たって落ちた影(かげ)
上記をうまく表現することによって存在感が生まれます。
丸いものは陰にグラデーションがつき、四角いものは面によって陰の色が変化します。
陰影の反対であるツヤは、素材によってぼんやりとしたハイライトだったり、ピンポイントで点のようにつくハイライトもあります。
そして、明暗がうまく表現できれば立体感を表現できます。
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線
直線や、曲線をうまく利用することによって表現することができます。
線をまっすぐ描くと緊張感が生まれ、少し曲線を混ぜて描くとゆるやかな印象を与えます。曲線を描くときも同様です。
また、モチーフの奥行きを表現したり、目線を表現できます。
例えば、目線よりやや低い位置の直方体を見ると、前より奥の辺の距離が短く見えます。また、コーヒーカップの口は真上から見ると正円に見えて、目線よりやや下に配置すると楕円形に見えます。
透明感
透明感を出すには、例えばガラス瓶であれば、ガラス瓶の奥に見えるものを描き、ガラスが受けた光やガラスの色を反映させます。
ガラスの色がやや緑色ならばガラス瓶の奥に見えるものを描き、乾いたら(7~10日ほど)透明の緑色の油絵具で塗ります。(なお、最初からガラス瓶の奥に見えるものを緑色に塗りながら描くことも可能です。)
そうすることによって、ガラス瓶の奥のものが緑色になり、いかにもガラスの奥にあるように見えます。
また、透明感とは別の話ですがガラス瓶の奥に見えるもので、形がゆがんでいる箇所があれば、そのように描くことによってガラス瓶とその奥にあるものの2つの存在感が出ます。
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インターネットの画像は使用しない
基本的にインターネットの画像は使用しないようにしましょう。
理由は以下です。
- オリジナリティがなくなる
- 著作権問題
もし、絵を描くすべての人がインターネット上の画像を描くことになったら必ずダブりが発生します。ダブることによってオリジナリティを失います。
描き方は一人ひとり必ずちがうかもしれません。しかし、構図やモチーフをまねすれば構図やモチーフに対してのオリジナリティがなくなります。
また、たとえ「商用利用可」のものでも著作権の問題があるかと思います。人物が写っていなくても、静物でも使用しないほうが良いかと思います。
インターネットの画像を参考にする箇所
インターネット上の画像を参考にすることがあるとすれば、それは構図や模写です。
習作として油彩紙や薄いシナベニヤ板に描いて練習をすればよいかと思います。
また、オリジナルのモチーフを配置するときに構図の勉強になると思います。
模写は、構図や画家の気持ちがわかります。その画家の技法がわからない場合が多いと思いますが、考えながらそれを表現しようとすることが大切です。
モチーフ探しで写真を撮るメリット
できれば実物を見たほうが良いのですが、必ずしもその場で描けない場合があります。そんなときはカメラでモチーフを撮影することをおすすめします。
写真を撮るメリットは、構図の勉強になるからです。
モチーフを画面の中に収めて、一枚の絵になるように撮ると良いです。
構図がうまくとれない場合、写真を撮ったあとパソコンで画像編集できますが、時間がかかるのでなるべく編集の手間がかからないように撮影しましょう。
撮影するコツは以下です。
- 対象に対して真正面から撮る
- 水平・垂直を意識して撮る
などです。
撮影する位置が悪ければ良い場所を探し、自分から動いて撮影しましょう。
まとめ
- モチーフのネタが少なくても、オリジナルで身近にある描きたいモチーフで描こう
- 迷ったらまず静物画、外に出たら風景画、自分を描けば人物画が描ける
- 身近なモチーフで重要文化財に指定された絵がある
何を描いて良いのかわからない場合は、まずは身近にある静物を描けば良いです。モチーフの配置や角度、光を調節して描いていきましょう。
重要なことは、自分のイメージしたことが手に伝わってそのとおりに表現できるかどうかということです。
最初は技術や筆のコントロールに苦労することが多いと思います。
ですが、ひとつひとつ実験しながら改善していけばできることが増えていくと思います。