この記事では次のことをお伝えします。
油絵の道具と名前を知りたい
- 油絵の道具の名前をふりがな付き画像付きで説明
- お店に言って本記事を見ながら道具を探すことができる
- それでもわからなければ店員さんに用途を聞いたり、セット購入しよう
油絵の道具はお店に行くとたくさん並んでいて、どれを選んだらよいかわからないかもしれません。
本記事では画材屋さんに行ってもスムーズに選べるように、油絵の道具と名前をふりがな付き、画像付きでその用途をご説明していきます。
なお、一部画像がない場合はリンクを貼っています。
もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。
支持体(しじたい)
支持体とは「何に油絵を描くか」の「何」の部分です。素材は紙や布、木などさまざまです。この支持体の名前を解説していきます。
キャンバス
キャンバスは、「張りキャンバス」と「キャンバス(ロール・カット)」に別れます。
「張りキャンバス」は木枠(きわく)に麻などの布を張ったものです。
「キャンバス(ロール・カット)」は、布だけで売られているものです。つまり、木枠とキャンバス生地を購入して、自分で張りキャンバスを作る人向けに販売しています。
初心者の方は、張りキャンバスを購入すればOKです。
また、キャンバスには規格があります。
主に4つの規格があり、
- F(Figure)
- P(Paysage)
- M(Marine)
- S(Square)
です。
Fは人物画、Pは風景画、Mは海の風景画に向き、Sは正方形です。
それぞれ号数があり、数字が大きいほどサイズも大きくなります。
油彩紙(ゆさいし)
油絵は普通、紙に描くことはできません。油が染み込んで、紙が作品がボロボロになってしまうからです。
ところが油彩紙は、油絵が描けるように開発された紙です。普通の紙よりは厚いですが、かさばらないのでとても便利です。
木製パネル
木製パネルは、木枠に板を貼った支持体のことです。シナベニヤ板が貼ってあり、下地材を塗れば木製パネルにも油絵を描くことができます。
キャンバスのように凹凸がなく表面がなめらかなので、細かい絵を描きたい人におすすめです。
支持体を支える道具
イーゼル
イーゼルは、支持体を固定して絵を描くための道具です。屋外・屋内用があり、形は三脚型やH型などがあります。素材も木製やアルミ製があります。屋内用には机に置いて描くことができる卓上タイプもあります。
ちなみに私は、三脚型・卓上タイプ・棒状のイーゼルを持っています。イーゼルがなくても立てかけたり支持体を寝かせて描くこともできますが、机に収まらない大きな作品となると立てて描いた方が良いので、イーゼルは持っていたほうが良いと思いますね。
細かい描画をするときの道具
腕鎮(わんちん)
腕鎮は、絵の細かい部分を描くとき手が震えずに描ける支えの棒のことを言います。
ピンポイントで繊細な描き込みができるので便利です。イーゼルにひっかけられれば、ホームセンターで購入した木の棒でも代用できます。
しかし、市販の腕鎮は、棒が何本かに別れていて、取り外し可能です。そのため、大きい作品は長めに使い、小さい作品は短く使うことができます。
下描きの定着の材料
フィキサチーフ
フィキサチーフは、下地材を塗り、下描きをしたあとに鉛筆の粉を画面に定着させるためのものです。液体タイプとスプレータイプがあります。個人的には手軽にできるスプレータイプがおすすめです。
フィキサチーフをしないと、そのあとに塗る油絵の具と混ざってしまい、油絵の具の色が黒く濁ってしまいます。ですので、濁りを防止するためにフィキサチーフを使用しましょう。
油絵具(あぶらえのぐ)
油絵具は「油絵の具」とも書いたりします。
色のもととなる粉や接着剤、溶剤を混ぜたものが油絵具となります。
初めは12色のセットを購入し、こだわりがでてきたら自分で単品を買い足して良いと思います。
ですが、基本的な色が揃っていれば混色である程度作れてしまいます。
ただ、例えば同じ青色でも白を足すと鮮やかさを失う青色と、鮮やかさをある程度保った青色があるので、その辺は試しながら使うしかないと思います。
また、油絵具には絵の具によってそれぞれ透明・半透明・不透明色があります。油絵具を混色するとき、その割合によって影響を受けすぐに相手の色に負けてしまう色があります。ですので、少しずつ試しながら混色してみましょう。
また、メーカーによって色の名前がちがう場合があります。
油絵具メーカー
国内の油絵具のメーカーは、主に3つです。
- ホルベイン
- クサカベ
- マツダ
これらのメーカーの油絵具を買っていればOKです。
続いて、海外の油絵具メーカーは次のようなものがあります。
- ロイヤル・ターレンス
- ウィンザー&ニュートン
- ルフラン ブルジョワ
海外の油絵具は日本では手に入りづらいです。探しまくると、海外のサイトに辿り着いて、翻訳しながらオンラインショップで購入しなければいけません。
とはいえ、翻訳しながらでも購入することができます。
私は、3度ほど注文しましたが、届かなかったことも破損していたなんてこともありませんでした。ただ、場所によって到着までに時間がかかる場合があります。
比較的日本で手に入りやすい海外メーカーの油絵具は、私も愛用しているウィンザー&ニュートンです。ただ、海外メーカーの油絵具は廃盤になる油絵具がチラホラ出てくると聞きます。「それは困る」という方は、国内のメーカーで揃えたら良いかと思いますね。
ただ、国内メーカーの油絵具でも廃盤にならないとは限りませんので、ご注意ください。
画用液(がようえき)
画用液とは、油絵の具に混ぜて乾燥速度を調節したり、光沢を出したり、仕上材など油絵完成後に塗ったりするさまざまな画用液があります。
溶き油(ときあぶら)
油絵具は、アクリル絵の具や水彩絵の具よりも粘度の高い絵の具です。塗りやすくするためには油絵具の硬さを柔らかくする場合があります。そんなとき溶き油は、油絵具の硬さを柔らかくして、筆の滑り具合をスムーズにしてくれる油です。
溶き油は、3種類あります。
揮発性油(きはつせいゆ)
揮発性油は、松やにを蒸留した「テレピン」と、石油から作られている「ペトロール」の2種類があります。
水彩絵の具では水で溶いて絵を描きますが、油絵具は揮発性油で溶いて絵を描きます。揮発性油は、その名の通り塗るとすぐに乾き、揮発して画面に残らなくなります。
揮発性油は、主に下描きに使います。
乾性油(かんせいゆ)
乾性油は、亜麻仁油(あまにゆ)から作られる「リンシードオイル」と、芥子油(けしゆ)から作られる「ポピーオイル」があります。
揮発性油とは対照的に、乾きが遅く頑丈な画面を形成します。
揮発性油と油絵具を混ぜて塗ると艶がなくなりますが、乾性油と油絵具を塗ると艶が出ます。
調合溶き油(ちょうごうときあぶら)
調合溶き油は、メーカーによって「ペインティングオイル」や「ペンチングオイル」などと表記されています。
調合溶き油には、さまざまなものが含まれていて、これ一本で油絵を描くことができます。
何が入っているかと言いますと、ホルベインの「オドレスペンチングオイル」を例にとると、
- 精製アマニ油
- 光沢成分
- 乾燥促進成分
上記のようなものが入っています。
調合溶き油単独で使用することも可能ですが、他のオイルと混ぜて描く描き方も説明されています。
- 下描きでは揮発性油で薄める
- 描き込みから仕上げの段階はリンシードオイルを加える
初心者の場合は、調合溶き油をベースに揮発性油や乾性油を少し足しながら絵を描いていけば良いです。
乾燥を早める画用液
速乾メディウム(そっかん)
速乾メディウムは、油絵の具に混ぜて乾燥を速くするメディウムです。ひび割れがせずに乾燥を速めることができます。
普通、油絵具は1週間くらいしないと表面は乾きませんが、速乾メディウムを使うと次の日には乾いています。ただし、色合いが少し変わる場合があります。
速乾ペインティングオイル
乾性油とアルキド樹脂を含んだ速乾性調合溶き油です。一日程度で表面が乾燥します。油絵は、表面が乾燥すれば再び描くことができるので、速く描きたい方には良いですね。
シッカチフ
シッカチフは、酸化を促して乾燥を速めます。内側から乾燥させるもの、表面から乾燥させるものがあります。
混ぜすぎるとひび割れなどが起こってしまう恐れがあります。ですので、決められた量を守って使いましょう。
乾燥を遅らせる画用液
ラベンダーオイル
ラベンダーを蒸留して作られた揮発性油です。乾燥を遅らせることができるのでグラデーションを作ったりぼかしたりが容易にできます。
光沢を調整する画用液
光沢を調整する画用液には、2種類あります。
- 描画のためのワニス
- 画面修正のためのワニス(加筆)
描画のためのワニス
描画のためのワニスは、乾性油と揮発性油が混ざっていて、油絵具を溶くときに使用します。絵の具によって光沢がバラバラです。ですので、光沢がばらつくのを防ぐことができます。
描画のためのワニスには「パンドル」「ダンマル」「マスチック」があります。
画面修正のためのワニス
画面修正のためのワニスは、油絵を描いて、一旦乾燥させたあとに表面に薄く塗るものです。
再び手を加えたいときに使います。
つやに統一感が出ます。つやが整うことによって色合いが合わせやすくなり、結果的に描きやすい画面になります。
画面修正のための主なワニスは「ルツーセ」です。ルツーセは、油絵具には混ぜないで乾燥した画面に塗ります。その後に塗った絵の具の定着も良くしてくれますよ。
画面を保護する画用液
画面を保護する画用液は、「画面保護用ワニス」とか「画面保護用ニス」などとも言われています。
画面保護用ワニスには、2つの種類があります。
- 画面を指触乾燥させて塗る画面保護用ワニス
- 画面を完全乾燥させて塗る画面保護用ワニス
指触乾燥させて塗る画面保護用ワニス
画面を指触乾燥させて塗る画面保護用ワニスには「タブロースペシャル」があります。メーカーによって名前がちがっていて「ラピッドタブロー」とも言ったりします。
完全乾燥させて塗る画面保護用ワニス
一方、画面を完全乾燥させて塗る画面保護用ワニスは「タブロー」と言います。
その他の画用液
その他の画用液として、油絵を描いてから吹きかけて膜を作り、絵の具の付着を防ぐ「油彩画面用コート」や固まった油絵の具を柔らかくして除去できる「剥離剤」(はくりざい)などがあります。
油絵を描く時の道具
刷毛(はけ)
刷毛は、地塗り(油絵の下地)に使ったり仕上材を塗ったりするときに使います。
とくに用途に決まりはないので、刷毛を使って絵を描く方もいらっしゃいます。筆が大きくなると、全体を見るようになるのでダイナミックな絵になる傾向があります。
筆
筆は、「油彩筆」(ゆさいふで)と言ったりもします。
筆にはそれぞれ形状と素材、長さがあります。
筆の形状
- 丸筆(ラウンド)
- 平筆(フラット)
- 平筆(フィルバート)
- 平筆(アングル)
- 扇形(ファン)
上記が全てではなく、代表的な形状を挙げてみました。
丸筆(ラウンド)は最も一般的な形です。学校で図工の授業で持っていた形状と同じかと思います。筆を画面に押したり、引いたりすると線の太さの調整ができます。
平筆(フラット)は、細い線を描いたり、面で塗ることができる筆です。厚塗りも比較的簡単にできます。
平筆(フィルバート)を使っていくと、角が取れてフィルバートのような形になります。面を塗ることもできますし、角がないので柔らかい印象を与えることができます。
平筆(アングル)は、蛍光ペンの太い部分のような形状です。平らな部分もありますし、尖った部分もあります。ですので、面を塗ったり細い線を塗ることもできます。
扇形(ファン)は、穂先が長くて外側に広がっています。ファンを別の呼び方で「ぼかし筆」とも言われています。ですので、色の境界を曖昧にすることができます。
筆の素材
筆の素材は、筆の硬さによって種類が分かれています。
筆の硬さは、
- 硬毛(こうもう)
- 中硬毛(ちゅうこうもう)
- 軟毛(なんもう)
上記にわかれます。
硬毛(こうもう)は、筆のコシが強い毛のことを言います。ですので、厚塗りに適しています。硬毛の筆には、豚毛(ぶたげ)があります。弾力があり、長持ちしやすい筆です。硬い筆なので、力強いタッチを得たい場合に向いています。
中硬毛(ちゅうこうもう)は、硬毛と軟毛の間にある硬さの毛です。中硬毛の筆には、ウォーターバジャー(ムジナ科)があります。
軟毛(なんもう)は、油絵具を含みやすい毛です。薄く溶いた油絵具を筆跡をつけないように塗ったり、細部を描き込むときに最適です。
軟毛の筆は多くの毛の種類があります。
馬毛はとても柔らかい毛で、油絵・日本画・水彩画などさまざまな技法に使用されています。
柔らかいだけではなく、弾力があって、穂先もまとまりやすい筆です。
コリンスキーは、イタチの一種で、絵の具の含みがよく、弾力性と耐久性に優れている毛です。
狸毛は柔らかめで絵の具の含みがよく、薄塗りに向いています。
バジャーは英語でアナグマの意味があります。コシが強く絵の具の含みがよい筆です。
リセーブルは、合成繊維の筆で、毛一本一本にウォータースポットと呼ばれるデコボコが作られているので、絵の具の含みが優れています。
ナイロン筆は、弾力があり筆のまとまりに優れています。
なお、髪の毛などの細い線を描く場合は「面相筆」(めんそうふで)という筆がおすすめです。
面相筆は、お店に買いに行くと油彩筆コーナーではなく、日本画のコーナーにあることが多いです。
ペインティングナイフ
ペインティングナイフは、筆と同じく描く役割をするものです。画面上で塗ったり、別の油絵具を混ぜたり、塗った色をひっかいてみたり、広い面を塗ってみたり、刃のエッジを利用して細く鋭い線を描いたりできます。
筆は色を塗るという足し算ですが、ペインティングナイフの場合は、削ったりひっかいたりするので、足し算と引き算の要素があります。
ペインティングナイフは、涙の形をした丸い形ものや、菱形のものなどがあります。刃の長さもさまざまです。
パレットナイフ
パレットナイフは、細長く板のような刃が付いているのが特徴です。ペインティングナイフより厚く柄と刃の段がないのが特徴です。
パレットナイフの使い方は、主に油絵具のパレットでの混色、パレットの油絵具を除去するために使います。
パレット
パレットは、油絵具のチューブを絞って出したり、違った絵の具同士を混ぜるとき、絵の具の粘度を調節したりするときに使います。
形は長方形や楕円形のものがあります。また、キャンバスには穴が空いているものがあります。キャンバスを持って描くときにはその穴に親指を入れて持ちながら絵を描きます。また、折りたたみ式のパレットもあります。屋外で制作していて移動するときには便利な機能です。
パレットの素材は紙、木、ガラスなどがあります。
紙製のパレットは、ペーパーパレットと呼ばれます。表面がつるつるとした紙が何枚も重なっているパレットで、パレットが汚れたり、これ以上色を出すスペースがないときに一枚めくって新しい面を出すことができます。
木やガラスなどのパレットは都度掃除が必要ですが、ペーパーパレットは丸めて捨てるだけなので非常に作業が楽です。
油壺(あぶらつぼ)・絵皿(えざら)
油壺は、オイルを入れる蓋つきの容器です。
揮発性油や乾性油など、容器を分けて入れます。
油壺の形は、少しの量の画用液でも使いやすいそろばんの形をしている「そろばん型」、凹凸がないので掃除しやすい形状の「筒型」などがあります。
油壺の容器の底にはクリップが付いていますので、屋外で使用するときに固定させて使うことができます。
一方、絵皿は画用液を入れる器です。絵皿は複数用意して、オイルごとに分けて使うと良いです。油壺より口が広いので、使いやすく、凹凸がないので洗いやすいです。
油壺と絵皿は同じ役割を果たすので、油壺か、絵皿を持っていればOKです。
なお、油壺には蓋がついていますが、オイルの状態は日々変わっていきます。特に揮発性油は揮発してなくなってしまう可能性が高いです。ですので、その日に使う分を注いで使い切ることをおすすめします。
後片付けに使う道具
ブラシクリーナー
ブラシクリーナーは、筆を洗う油、つまり筆洗油です。水彩絵の具やアクリル絵の具で言う水の役割をします。石油系の溶剤で、筆洗器に入れて使用します。ブラシクリーナーを筆につけるのは、その日の油絵制作が終わった後に使うことをおすすめします。
筆洗器(ひっせんき)
筆洗器は、蓋つきの容器の中に穴が空いた「こし器」がついた筆洗いの容器です。
ブラシクリーナーをこし器より上、筆が浸かるくらいまでブラシクリーナーを入れます。
その他の道具
その他の道具として、本来油絵の道具ではないですが、あると便利な道具をご紹介します。
キッチンペーパー・ティッシュペーパー
キッチンペーパーやティッシュペーパーは、画面に塗ったオイルや油絵具を拭き取ったり、一本の筆で油絵を描いていて、今まで使っていた色を別の色に替えるとき拭き取るために使ったりします。また、その日のオイルを油壺や絵皿から拭い去るときに使います。
まとめ
- 油絵の道具の名前をふりがな付き画像付きで説明
- お店に言って本記事を見ながら道具を探すことができる
- それでもわからなければ店員さんに用途を聞いたり、セット購入しよう
油絵の道具の名前をご紹介していきました。
もし、今回ご紹介した油絵の道具の名前を見ても、画材屋さんに行くとわからなくなる場合は、店員さんに用途を聞いてみるか、油絵具のセットをご購入することをおすすめします。
油絵具の色もいっぱいありますが、使っていくうちにわかってくるようになるので、心配は要りませんよ。