油絵の下塗りの乾燥時間【油絵の乾燥時間に関する考え方と乾燥方法】

この記事では次のことをお伝えします。

油絵の下塗りの乾燥時間が知りたい

油絵の下塗りの乾燥時間を早めてなるべくスムーズに作業したいですよね。

今回は、油絵の下塗りの乾燥時間、下塗り後の制作工程、乾燥の仕組み、乾燥短縮方法や、乾燥を意識しなくても良い制作方法をご紹介します。

この記事のざっくりとした結論
  • 油絵の下塗りの乾燥時間は1~2日
  • 揮発性油のみで下塗りした場合の日数
  • 下塗り以降は揮発性油と乾性油を使って描いていこう

もし続きが気になる場合は、記事を読み進めてみてください。

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油絵の下塗りの乾燥時間

油絵の下塗りの乾燥時間は、1~2日です。

ただし、揮発性油だけで下塗りを行った場合に限ります。

油絵の下塗りは、主に「揮発性油+油絵の具」で行います。

少ない油絵の具に揮発性油を多めにして「おつゆ」状態にして描きます。

この描き方を「おつゆがき」と言います。

油絵を描く人はおつゆがきをしよう!

揮発性油は文字通り揮発(気体になる)する油です。

揮発性油と油絵の具のみで描いた下塗りはつやがなくカラカラの状態です。

ですが、この状態がその上に塗った油絵の具の定着を良くしてくれます。

シャバシャバの液体の状態なので、支持体を立てていると下に流れ落ちます。

なので、机に支持体を寝かせて描いたほうが良いかと思いますね。

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下塗り後の描き方

オイルの割合

下塗り後の油絵の描き方は、初めはひとつの油壺に入れる揮発性油の量は多めで、乾性油を少なめにします。

揮発性油>乾性油

となればOKです。

徐々に揮発性油の割合を少なめにし、乾性油を多めにしていきます。

揮発性油>乾性油

揮発性油=乾性油

揮発性油<乾性油

そして最後の方では乾性油の割合が、揮発性油を上回ります。

上記のオイルの割合を守って油絵を描けば問題ありません。

油絵はペインティングオイル(調合溶き油)だけでも描ける

揮発性油と乾性油を調合するのが苦手な人は、ペインティングオイルだけで描きましょう。

ペインティングオイルは、揮発性油や乾性油などが調合されたオイルです。

下塗りが終わったら、ペインティングオイルだけを油壺に注いで使います。

もし、粘度を調節したくなったら、ペインティングオイルを入れた油壺に揮発性油や乾性油を注いで使います。

油絵の具の乾燥時間に関わる要因

ここからは、油絵の具の乾燥時間に関わる要因をみていきます。

油絵の具の乾燥時間は、さまざまな条件によって変わります。

  • メーカー
  • 油絵の具
  • 塗るときの厚み
  • オイルの割合
  • 気温

以上です。

ひとつずつ解説していきます。

メーカー

油絵の具は、メーカーによって乾燥時間が異なります。

例えば、油絵の具メーカー「クサカベ」の「KUSAKABE ARTISTS’ OIL COLOURS」にある

「ウルトラマン(021)」の乾燥日数は7日です。

一方、油絵の具メーカー「ホルベイン」の「EXTRA FINE ARTISTS’ OIL COLOR」にある「ウルトラマリンブルー(H122)」の乾燥所要日数は4日前後です。

油絵の具のチューブには乾燥までの日数が表記されているものがあります。

メーカーによって記載されている内容が変わってきます。

油絵の具

油絵の具によって乾燥時間に差があります。

これは、「HOLBEIN」の「乾燥所要日数」からもわかるように、乾燥日数が4段階に分かれています。

塗るときの厚み

油絵の具の乾燥時間は、塗るときの厚みによって変わってきます。

  • 薄塗り:1日
  • 厚塗り:2~3日
  • 盛り上げ:6~7日

油絵の具を厚めに塗って何日かたったあと表面をさわると、表面は乾いていて弾力を感じることがあります。

なので、油絵の具の表面は乾いているけれど、中はまだ乾いていない可能性が高いです。

オイルの割合

オイルの割合によっても乾燥時間が変化します。

揮発性油は乾燥時間が短めで、乾性油は乾燥時間が長めです。

とはいえ、下塗りは基本的に「油絵の具+揮発性油」で行います。

揮発性油は、「テレピン」「ペトロール」などで、その成分のほとんどがすぐに蒸発してしまいます。

揮発性油と油絵の具の割合にもよりますが、「おつゆ」の状態であれば1日おいただけで油絵が描けてしまいます。

下塗りのあとのオイルの割合は、揮発性油に乾性油も加えて、徐々に乾性油の割合を多くしていきながら完成に向かって油絵を描いていきます。

気温

油絵の具は、気温によっても乾燥時間が変わります。

乾燥時間は、夏が早く、冬は遅いようです。

また、湿度は60%ほどが理想です。

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油絵の乾燥時間を短縮する方法

どうしても乾燥を早めたい方は以下を試しましょう。

油絵の具の乾燥時間短縮方法
  • アクリル絵の具でほとんどの描画を済ませる
  • 速乾性のオイルを使う
  • 樹脂(メディウム)を使う
  • 乾燥促進剤を使う
  • 速乾性の油絵の具を使う

以上です。

これもひとつずつ解説していきましょう。

アクリル絵の具でほとんどの描画を済ませる

まずは、アクリル絵の具でほとんどの描画を済ませる方法です。

アクリル絵の具は、油絵の具に比べて乾燥時間が短いです。

アクリル絵の具と油絵の具の乾燥時間
  • アクリル絵の具:3日
  • 油絵の具:7日~

油絵の具が乾燥するまで約7日間手を加えられないのに対して、アクリル絵の具は4日目には描くことができます。

ほぼアクリル絵の具で描いたとき
  • 制作1日目:下地材(ジェッソ)
  • 3日乾かす
  • 制作2日目:アクリル絵の具
  • 制作3日目:アクリル絵の具
  • 制作4日目:アクリル絵の具
  • 3日乾かす
  • 制作5日目:油絵の具(揮発性油のみ)
  • 1日乾かす
  • 制作6日目:油絵の具(完成)

 計13日

油絵の具で描いたとき
  • 制作1日目:下地材(ジェッソ)
  • 3日乾かす
  • 制作2日目:油絵の具(揮発性油のみ)
  • 1日乾かす
  • 制作3日目:油絵の具
  • 7日乾かす
  • 制作4日目:油絵の具
  • 7日乾かす
  • 制作5日目:油絵の具
  • 7日乾かす
  • 制作6日目:油絵の具(完成)

 計31日

制作時間は変わらないのに、乾かす時間によって日数に影響が及びます。

速乾性のオイルを使う

つぎに、速乾性のオイルを使う方法です。

ペインティングオイルクイックドライ

ペインティングオイルクイックドライは成分の多くがアルキド樹脂です。

1日で乾くペインティングオイルです。

粘りを感じるときは揮発性油で薄めてサラサラにすることができます。

クイックドライングメディウム

クイックドライングメディウムは、乾燥を促進する調合溶き油です。油絵の具と、クイックドライングメディウムだけで油絵を描いていくことができます。

樹脂(メディウム)を使う

メディウムには、さまざまのものがあります。

混ぜる量に上限はなく、いくらでも使えます。量は多ければ多いほど乾くスピードが増します。ただし、特に不透明・半透明の油絵の具は透明度が高くなってしまったり、油絵の具のつやが変化したりします。

メディウムは、ものによって「光沢ある・なし」があり、乾燥時間が変わります。目的に合わせて選びましょう。

ラピッドメディウム

つやあり、透明性を与える、亀裂なし、内側から固める、使用制限なし

乾燥時間:数十分~数時間

ストロングメディウムグロス

つやあり、透明性を与える、亀裂なし、内側から固める、使用制限なし

乾燥時間:12時間~24時間

ストロングメディウム

つやなし、内側から固める、使用制限なし

乾燥促進剤(シッカチフ)を使う

シッカチフは、液状の乾燥促進剤です。1日〜3、4日で油絵の具が乾燥します。

金属が含まれていて、乾性油に酸素を運ぶ役割を持ち油絵の具を乾燥させます。

シッカチフを混ぜる量には制限があり、混ぜすぎるとひびが入る可能性があります。なので、使用量には特に注意しましょう。

油絵の具や乾性油に混ぜることができます。

シッカチフ ブラン

乾燥促進弱め、内側から均等に乾燥、使用制限あり

シッカチフ クルトレ

外側と内側の両方から乾燥促進する、使用制限あり

ちなみにシッカチフ クルトレを使うと油絵の具の色の濃さが変化してしまうので、影響が少ない油絵の具で描いたほうが良さそうですね。

速乾性の油絵の具を使う

つづいての乾燥時間短縮法は、速乾性の油絵の具を使う方法です。

クイック油絵の具は、亀裂や変色の試験に合格した乾燥速度の早い油絵の具です。

1日で指触乾燥する油絵の具です。

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速乾性のものを使うリスク

速乾性のものを使うリスクは以下です。

・多用すると画面に何かしらの悪影響が出るかもしれない

・油絵の具の効果を発揮できない

・アクリル画で良いのでは?

以上です。

多用すると画面に何かしらの悪影響が出るかもしれない

乾燥を早めたいがために速乾性のものを多用すると、剥がれや亀裂、変色、つやの変化の可能性が出てきます。

なので、用量を守ってほどほどに使用しましょう。

油絵の具の効果を発揮できない

本来油絵は「ゆっくり乾く」性質を利用して描きます。乾燥を早めるとその性質が変わってしまいます。

なので、ぼかしや画面上で色を混ぜるのが難しくなったりする可能性があります。

アクリル画で良いのでは?

油絵の具を早く乾燥させたいがために、シワや剥がれなどのリスクを背負ってまで乾燥剤を利用するなら「それだったらアクリル画で良いのでは?」と思うかもしれません。

アクリル絵の具を使えば、わざわざお金をかけて乾燥剤を使う必要がなくなります。

できれば、なるべく油絵の具は自然乾燥させ、油絵なら油絵の具、アクリル画ならアクリル絵の具の長所を活かして制作したいものですね。

自然乾燥させるには、事前に計画を立てながら進めていくと良いかと思います。

ちなみにアクリル絵の具は、ドライヤーで乾燥させても問題ありません。一方、油絵の具はドライヤーで乾かそうとしても意味がないようですよ。

乾燥時間が気にならなくなる方法

ここからは、乾燥時間が早くなる方法ではなく、乾燥時間が気にならなくなる油絵の描き方をご紹介します。

方法は、

・複数の油絵を進めていく

・ひとつの画面を分割して油絵を描いていく

上記のように制作を進めていくことです。

複数の油絵を進めていく

複数の制作を進めていく方法です。ひとつの油絵だけを描くと、「待ち時間」が発生します。なので、複数の油絵を描いていくことによって待ち時間を減らしながら、多くの油絵を描くことができます。

油絵A・B・Cを並行して制作する場合

(カッコ内は乾燥、太字は手を動かしている時間)

  • 6月1日→油絵A:描画
  • 6月2日→(油絵A:乾燥)油絵B:下地材塗る
  • 6月3日→(油絵A:乾燥 油絵B:下地材乾燥)油絵C:下地材塗る
  • 6月4日→(油絵A:乾燥 油絵B:下地材乾燥 油絵C:下地材乾燥)
  • 6月5日→(油絵A:乾燥)油絵B:下書き  (油絵C:下地材乾燥)
  • 6月6日→(油絵A:乾燥)油絵B:下塗り   油絵C:下書き
  • 6月7日→(油絵A:乾燥 油絵B:下塗り乾燥)油絵C:下塗り
  • 6月8日→ 油絵A:描画 油絵B:描画   (油絵C:下塗り乾燥)

上記のように、複数の油絵の工程をチグハグにすることで、乾燥時間を減らして制作に取り組むことができます。

ただし、複数の制作をかかえすぎて 作品の質が落ちてしまっては意味がありません。

なので、無理のないスケジュールで制作していきましょう。

ひとつの画面を分割して油絵を描いていく

ひとつの画面を分割して油絵を描いていく方法です。毎回ひとつの画面すべてに手を入れてしまうと画面全体を乾燥させなければいけなくなります。

なので、例えば「主役・背景A・背景B」というように、ひとつの画面を分けて油絵を描いていくことで、乾燥時間を少なくして、ローテーションでひとつの作品を制作することができます。

油絵Aを「主役」「背景A」「背景B」並行して制作する場合

(カッコ内は乾燥、太字は手を動かしている時間)

  • 6月1日→油絵A 主役:描画
  • 6月2日→油絵A(主役:乾燥)背景A:描画
  • 6月3日→油絵A(主役:乾燥 背景A:乾燥)背景B:描画
  • 6月4日→油絵A(主役:乾燥 背景A:乾燥 背景B:乾燥)
  • 6月5日→油絵A(主役:乾燥 背景A:乾燥 背景B:乾燥)
  • 6月6日→油絵A(主役:乾燥 背景A:乾燥 背景B:乾燥)
  • 6月7日→油絵A(主役:乾燥 背景A:乾燥 背景B:乾燥)
  • 6月8日→油絵A:主役:描画(背景A:乾燥 背景B:乾燥)

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油絵の具の「乾燥時間」とは

油絵の具の「乾燥時間」とは、固くて体積や形が安定するまでの時間を言います。

油絵の具の形が安定するまでには、4段階の状態があります。

油絵の具の4つの乾燥過程
  • 準備段階
  • 生乾き
  • 表面乾燥
  • 完全乾燥

準備段階

準備段階は、まさにあなたがチューブから油絵の具を絞り出し、油絵を描いている段階です。

乾燥に向かって準備している段階ですね。

生乾き

生乾きは、油絵を描いてから3、4日頃~のことです。生乾きは、油絵を描き終わって油絵の具の表面がプヨプヨする状態です。油絵の具が指につくかつかないかわからない状態です。

表面乾燥

表面乾燥は、油絵を描いてから7日頃~のことです。

表面乾燥は、油絵の具の表面を押しても戻ってこない状態です。ただし、表面は乾いていますが、まだまだ中は乾いていません。

ちなみに、「指触乾燥(ししょくかんそう)」とは表面を優しくさわっても手に油絵の具がつかない状態のことで表面乾燥と指触乾燥は同じ意味です。

この状態ですと、指触乾燥の状態で塗るニスを使うことができます。

ただし、まだ中は乾燥していません。

完全乾燥

完全乾燥は、乾燥が中まで行き渡り、指で押しても形が変わらない状態を言います。

油絵の具の厚さにもよりますが、油絵を描き終えてから6ヶ月から1年くらい時間を要します。

重ね塗りする場合に重要な「表面乾燥」

重ね塗りする場合、特に重要なのが「表面乾燥」です。

なぜなら、重ね塗りは表面乾燥してから行う作業だからです。

下層が乾いていないと重ね塗りできません。

表面乾燥にかかる時間は、気温にもよりますが油絵の具の厚さによっても変化します。

例えば、薄塗りは2~3日、厚塗りは7日くらいです。

また、オイルの量によっても乾燥時間が前後します。

乾性油は乾きが遅いので、厚塗りで、さらに乾性油が多ければ当然乾きが遅くなります。

そして、油絵の具の顔料や乾性油によっても乾燥時間が変わります。

ビリジアンやコバルトブルーなどの金属酸化物が含まれていると、乾燥を助けます。

逆に、チタニウムホワイトやウルトラマン、ランプブラックなどは乾きが遅いです。

また、油絵の具に混ぜる乾性油(メディウム)は、リンシードオイルかポピーオイルを使用しますが、リンシードオイルは乾燥が早めでポピーオイルは乾燥が遅めです。

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まとめ

油絵の下塗りの乾燥時間【油絵の乾燥時間に関する考え方と乾燥方法】
  • 油絵の下塗りの乾燥時間は1~2日
  • 揮発性油のみで下塗りした場合の日数
  • 下塗り以降は揮発性油と乾性油を使って描いていこう

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